特殊詐欺撲滅に向けタイとカンボジアで共同作戦開始
特殊詐欺撲滅に向けタイとカンボジアで異例の共同作戦開始
要点
- 60以上の詐欺拠点のリスト共有: タイ側はすでにカンボジア国内の60箇所以上と特定されている詐欺拠点の位置情報(座標つきリスト)をカンボジア側へ提供済みであり、これを元にした共同掃討作戦の具体化が協議されます。
- 作戦計画と優先順位の確定: 共同タスクフォースの具体的な作戦計画や、60を超える拠点のうちどこから着手するかといった優先ターゲットが決定される可能性があります。
- 国境連携の強化: アランヤプラテート—ポイペト軸を中心とした国境での情報連携、即応体制の手順、逮捕者の引き渡しや送還に関する運用整理も議題となる見込みです。これは、先日合意されたGBC(特別国境委員会)の内容を実装する段階へと進むものです。
タイとカンボジアは、両国間での連携を強化し、カンボジア国内に潜む特殊詐欺(サイバー詐欺)拠点の撲滅に向けた共同作戦を本格的に始動します。手始めに2025年9月16日、タイ側のサケーオ県で両国の警察当局や内務省関係者による実務協議が開催され、共同タスクフォースの具体的な行動計画策定が主な議題となる予定です。
共同作戦開始への背景
近年、東南アジア地域ではサイバー詐欺が深刻な問題となっており、特にカンボジア国内に多数の詐欺拠点が点在していることが国際的にも指摘されています。これらの拠点からは、主にタイ人を含む近隣諸国の人々が被害に遭っており、人身取引や強制労働といった問題も絡む複雑な様相を呈しています。
このような状況を受け、国際社会からの圧力も高まっており、米国政府は2025年9月9日にミャンマーやカンボジアの巨大サイバー詐欺網を制裁指定するなど、域内の拠点壊滅に向けた協調圧力が強まっています。
作戦開始に向けた会議の日程
2025年9月16日にタイのサケーオ県(アランヤプラテート周辺)で開催される実務協議には、タイとカンボジアそれぞれの内務省および国家警察が参加する予定です。これは、以前に立ち上げられた「共同タスクフォース」のフォローアップ会合として位置づけられています。
タイ外務省の報道官は、この「詐欺拠点の一掃」が、重火器撤収や地雷除去と並ぶ国境課題の「3本柱」の一つであり、その進展が国境運用の円滑化にも影響を与えうると説明しています。
実行への道のり:時期は未定
実務協議は明日開始されますが、実際に現地での掃討作戦がいつ始まるかは現時点では未定です。その理由としては、以下の点が挙げられます。
- 「会合」段階であること: 9月16日の協議は、計画策定、優先拠点の選定、協力体制の確認、資源の配分などを決めるための話し合いであり、実際の現地捜査・取締りはこの後の段取りに左右されます。
- 国際協力・法的調整の必要性: 詐欺拠点がカンボジア国内にあるため、カンボジアの法執行機関・行政の同意、管轄の確認、捜査令状等の法的手続き、国外捜査協力の枠組みが不可欠であり、これらの調整には時間を要することが一般的です。
- 治安・安全上の準備: 拠点の場所が辺境である可能性や、捜査チームの投入、情報収集、被害者の証言確保など、事前に広範な準備が必要です。
- 情報発表の慎重さ: 政府やメディアは、実施日付・時間を明言せず「予定」「今後取り組む」といった表現にとどまることが多く、公式なアナウンスがあるまでは「準備中」と見なされます。
今後の見通し
この協議後には、公式な発表(コミュニケ、記者会見要旨、警察発表など)が出される見込みです。それらの発表を通じて、共同作戦の具体的なスケジュールや目標、両国の協力体制の全容が明らかになることが期待されます。
特に、米国による制裁措置や、中国をはじめとする国際社会からの厳しい視線が、今回の共同作戦に大きな推進力となっています。国際的な圧力は、両国が詐欺撲滅へ向けて迅速かつ実効的な行動を取るよう促しており、今回の協議はその具体的な第一歩となるでしょう。
また、タイとカンボジア両国は、国際社会からの支援や国境管理の円滑化、さらに重火器撤収や地雷除去といった他の国境課題の解決に向けても連携を深めており、この詐欺拠点掃討の進展が、今後の相互協力と国際的評価を左右する重要な条件となることが示唆されています。 今後、国際社会が注視する中で、タイとカンボジアがどのように連携し、この複合的な課題に立ち向かうのかが注目されます。
出典
- กระทรวงการต่างประเทศ (タイ外務省)
- The Nation Thailand
- AP News
この記事を書いた人
keitasatou:タイムラインバンコク編集者
バンコク在住10年以上ライター、バンコクで複数のSNSを運用しておりフォロワー総数は7万人以上。ライターという特殊な職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。Facebook

