止まらぬバーツ高にタイの新首相アヌティン氏から緊急指示
出典:https://www.bbc.com/
タイの通貨バーツが急騰を続けており、タイ経済の基盤である輸出産業や観光業に深刻な影響を与え始めています。これを受け、アヌティン新首相は関係閣僚やタイ中央銀行(BOT)に対し、緊急の対策を検討・実施するよう指示しました。特に、円安が進む日本の状況と相まって、外国人旅行者や在住者にも影響が広がる中、政府・中央銀行の難しい舵取りが注目されます。
タイバーツが4年ぶり高値水準:経済への影響に懸念
現在のタイバーツは外国為替市場で著しい高騰を見せており、2025年9月上旬には一時1米ドル=31.57バーツ台まで上昇、これは約4年ぶりの高値水準を記録しました。年初からの上昇率は約8%に達し、アジア通貨の中でも特に際立った強さを見せています。
バーツ高の主な要因
この急激なバーツ高は、複数の国内外要因が複雑に絡み合って起きています。
- 米国の利下げ観測: 米国が年内に利下げに踏み切るとの見方が市場で広がり、米ドルが売られることで、相対的にバーツを含む他通貨が買われやすくなっています。
- タイの政情安定: アヌティン新政権が発足し、政治的な先行き不透明感が後退したことで、海外の投資家がタイの国債などを買い進める動きが活発化しています。先週は海外からの債券流入が特に目立ったとの指摘もあります。
- 継続的な資本流入: 海外からのタイへの直接投資や証券投資が継続しており、バーツ買いの需要が高まっています。
- 金関連フローの影響: オンラインの金取引や、カンボジア向け金輸出の急増といった「異常値」が確認されており、これがバーツ買い圧力の一因となっている可能性が指摘されています。
「行き過ぎたバーツ高」がタイ経済に与える深刻な打撃
バーツ高は、タイ経済の主要セクターに具体的なダメージを与え始めています。
輸出競争力の低下と企業の収益圧迫:
- タイ製品の価格が、国際市場(ドル建て)において相対的に割高になり、ベトナムなど他のライバル国との価格競争で劣勢に立たされる懸念が強まっています。
- 輸出企業は海外で得た米ドルなどの外貨をバーツに両替しますが、バーツ高が進むと手元に残るバーツの額が目減りし、企業の利益を直接圧迫します。特に中小企業にとっては死活問題です。タイ工業連盟(FTI)は、輸出採算の適正レンジを1米ドル=34~35バーツと主張しています。
- 農産品、繊維、自動車部品といった主要輸出品目が特に影響を受ける見通しです。
観光業への打撃:
- 外国人観光客にとってタイでの滞在費用が割高になり、観光収入の減少につながる恐れがあります。これは、タイ経済のもう一つの柱である観光業にとって大きな痛手です。
財務省は、このバーツ高が続けば、年内のGDP成長率が当初予測の3.8%から3.5%に下振れする可能性もあると試算しており、懸念が強まっています。
出典:
- Thai PBS
- Bangkok Post
- Thairath
- タイ工業連盟(FTI)
- タイ中央銀行(BOT)
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