MENU

タイのカジノ合法化 上院が一転否決へ 経済より社会への悪影響を懸念

タイのカジノ法案が一旦白紙になったことを伝える画像。カジノのルーレットホイールの写真の上に「最新ニュース タイ カジノ法案 一旦白紙へ」というテキストが記載されている。
Thaim Line Bangkok

2025年9月23日(火)夜、タイの上院は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の設置を可能にする「娯楽施設法案」の採決を行いました。その結果、法案は賛成少数で否決され、現政権が推進してきたカジノ合法化への動きは一旦白紙に戻ることになります。

なぜ否決されたのか?(上院が指摘した4つの問題点)

上院の特別委員会が提出し、多くの議員が否決の理由とした調査報告書では、主に以下の4つの問題点が指摘されています。

  • 社会への悪影響への懸念: ギャンブル依存症の増加、マネーロンダリングの温床化、犯罪率の上昇といった社会問題が発生するリスクが、経済的利益を上回ると判断されました。
  • 憲法違反の可能性: 法案が、国の道徳や善良な文化を守るべきとするタイ憲法の条項に抵触する可能性が指摘されました。
  • 経済効果への疑問: 政府が主張する経済効果について、利益の大部分は外国資本を含む民間投資家に渡り、国民への還元は限定的だと結論付けられました。
  • 国民の理解不足: 世論調査でも反対意見が根強く、国民的コンセンサスが得られていない中での拙速な合法化は避けるべきだと判断されました。

今後の見通し

この上院での否決は、法案を推進してきたアナンティン政権にとって大きな打撃となります。これにより、この法案は廃案となる可能性が非常に高くなりました。

政府が法案の内容を大幅に修正し、上院が懸念する問題点への具体的な対策を盛り込んだ上で、将来的に再提出する可能性は残されていますが、そのハードルは極めて高くなったと言えます。当面の間、タイでのカジノ合法化は実現しない見通しです。

まとめ:国際競争と国内秩序の狭間で

カジノ推進派は、マカオやシンガポールとの国際競争に打ち勝つための経済起爆剤として合法化を主張していましたが、上院はそれよりも国内の社会秩序への悪影響を重く見ました。今回の上院の判断は、タイが短期的な経済効果よりも、長期的な社会の安定を優先するという明確な意思表示と言えます。

この判断が下されたタイミングは重要です。観光客の伸び悩み、歴史的なバーツ高、アメリカとの関税問題など、タイが多くの難題に直面する中で、新政権が今後どのような経済政策でこの難局を乗り越えていくのか。その手腕に、タイ国内だけでなく世界中の日系企業も固唾を飲んで注目しています。


この記事を書いた人

keita satou

出典

Bangkok Post

The Nation Thailand

関連記事

about me
タイムラインバンコク編集部
タイムラインバンコク編集部
ライター
タイムラインバンコク編集部は、バンコクに在住する経験豊富な編集者とライターからなる専門チームです。日本人メンバーだけでなく、日本語能力試験N1を持つタイ人メンバーも在籍しており、多様な視点から情報を捉えることを大切にしています。 インターネット上の情報だけでなく、実際に現地へ足を運び、独自の取材・調査を行うことを信条としています。グルメ、ビューティー、最新ニュースからカルチャーまで、バンコクで暮らす人、訪れる人にとって本当に価値のある、正確で信頼できる情報を厳選してお届けします。日本のメディアに情報提供することもあります。
記事URLをコピーしました