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【告発 スキャンダル】国会で上納金システムの暴露。警察幹部ら30人超の賭博サイト関与疑惑

タイの警察幹部ら30人超の賭博サイト関与疑惑を報じるサムネイル。「国会で上納金システム暴露」という見出しと共に、オンライン賭博サイトから警察官、警察幹部の家族、政治家へ違法収益が流れるフローチャート図が示されている。
keita satou

タイ国家警察を揺るがす大規模な汚職スキャンダルが、国会を舞台に暴露されました。2025年11月13日、元警察副長官の「ビッグ・ジョーク(スラチェート・ハックパーン)」氏が下院の委員会に出席し、違法オンライン賭博(灰色ビジネス)から現職の警察幹部や政治家へ「上納金(スワイ)」が流れていたとする、詳細な証拠を提出したと報じられています。

暴露された「上納金システム」の詳細

ビッグ・ジョーク氏が市民団体代表のアッチャリヤ氏と共に国会の「国家安全保障・国境・国家戦略・改革委員会」に提出した資料には、賭博サイトからの具体的な資金ルートが示されていました。

資金ルートの構造

報道によると、資金の流れは「賭博サイト運営者 → マネーミュール役の女性(ピムウィライ・プロンオーン氏) → 警察官・政治家・その家族」というものであったとされています。

疑惑の送金先(100回以上)

お金の流れ相関図
  • 警察官 約30人:
    すでに懲戒調査が進んでいる「200人超」のグループとは別枠で、新たに関与が疑われる約30人のリストが提示されました。
  • 警察幹部の家族:
    ある高位警察幹部(報道では「ビッグ・トー」元国家警察長官を指すとみられる)の家族口座に対し、妻に38回、兄と姉に合わせて70回近い送金が確認されたとされています。
  • 南部地方の政治家:
    南部の地方政治家および下院議員(イニシャル”ช”)も資金の受け取り手として名前が挙がっています。

「スワイ(上納金)」の証言

委員会では、資金が「賭博サイトの運営保護の見返り」であり、「警察へのスワイ(みかじめ料・上納金)」であったとの証言がなされました。特に、本来オンライン賭博を摘発すべきサイバー犯罪対策部隊「PCT4」の一部幹部に対し、毎月5日と10日に送金されていた疑惑も浮上しています。

【総括】タイ警察「灰色ビジネス」汚職構造の全体像

今回の国会での告発は氷山の一角であり、タイ社会に深く根差した「灰色ビジネス」と警察・政治家の癒着構造の全容が明らかになりつつあります。一連の事件の流れは以下の通りです。

1. 序章:「トゥハオ事件」と癒着の表面化(2022年)

中国人マフィア「トゥハオ」氏の摘発と、その後のチュウィット氏による内部告発により、警察高官や入国管理局が「灰色ビジネス」から巨額の賄賂を受け取り、違法行為や不正ビザ発給を見逃していた事実が初めて公になりました。

2. 発展:警察内部の利権争いと「PCT」の腐敗(2023年〜)

「トゥハオ事件」で従来の利権構造が崩れると、警察内部では残された利権(特にオンライン賭博)を巡る派閥争いが激化。特に、オンライン賭博を取り締まるはずの専門部隊「PCT(サイバー犯罪特別部隊)」内部の腐敗が深刻化し、PCT幹部が逆に賭博組織から賄賂を受け取り「黙認」や「捜査情報漏洩」を行っていた疑惑が浮上します。

3. 激化:警察トップ「ビッグ・ジョーク vs ビッグ・トー」の権力闘争(2024年〜)

このPCTの腐敗疑惑が、警察トップの座を巡る権力闘争の火種となります。当時のNo.2であった「ビッグ・ジョーク(スチャート氏)」側と、警察長官であった「ビッグ・トー(トーサック氏)」側が、「相手こそが違法賭博ネットワークから利益を得ている」と互いを告発し合う泥沼の展開となりました。事態を重く見た首相が介入し、2024年春、両者を同時に「同時停職」させるという異例の措置に発展しました。

4. 最新:汚職構造の決定打(2025年10月〜11月)

停職中の両者の対立は、以下の2つの動きで決定的な局面を迎えます。

  • トーサック派閥への懲戒判断(10月):
    警察苦情審査委員会が、「トーサック元長官+警察官200人超」が違法賭博から利益供与を受けた「有責の疑いあり」と公式に判断。
  • ビッグ・ジョーク氏の反撃(11月):
    今回(11月13日)、ビッグ・ジョーク氏が国会で「新たな証拠」を提出。これにより、警察幹部の家族口座や南部政治家を含む追加30名以上の資金ルート、さらに「PCT幹部への定期的な送金」が暴露されました。

今後の捜査と警察側の反応

ビッグ・ジョーク側は、提出した資料を国家汚職防止委員会(NACC)、マネーロンダリング防止局(AMLO)、税務当局に送付し、資産凍結や刑事訴追、納税履歴の精査を進めるよう要請しました。

一方、現職の警察幹部からは「警察組織全体を犯罪組織呼ばわりするのは重大な問題だ」と強く反発する声も上がっています。

まとめ

まとこしやかにタイ在住者の間で都市伝説のように噂されるタイの賄賂問題。ついに明るみに出たニュースです。

私の知人の甥っ子(地方在住)がバンコクに遊びに来た際、彼はとても優秀で数学のコンテストで入賞したと聞いたので、彼が小学生の時に将来の夢は?と聞いたところ警察官と言ったので、どうして?と聞くとお金がたくさん儲かるからと言われたのが印象的でした。

現時点では、これらの証拠は「疑惑」の段階であり、刑事裁判で有罪が確定したものではありません。しかし、警察トップ層と政治家を巻き込む大規模な汚職構造の解明が、国会やNACC、AMLOなどによって進められることになりそうです。この事件は、カンボジア国境などの「詐欺(スカム)拠点」や、暗号資産(クリプト)を使ったマネーロンダリングとも関連が指摘されており、タイの「灰色ビジネス」の根深い問題が警察制度の根幹を揺るがす事態に発展しています。

この記事の出典

  • Thaiger
  • Thairath
  • Thai PBS
  • Thai TV 5 HD

この記事を書いた人

keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
タイムラインバンコク編集部
Facebook(keita satou)

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Keita Satou
タイ在住ライター
タイ在住ライター バンコク在住10年以上。旅行ライセンスの持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォロワー1700人)や複数のSNS(総フォロワー7万人以上)を運営する。日本のテレビ・メディア取材経験多数あり。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
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