【タイ洪水】死者85人「300年に一度」の豪雨被害 水位下がるも現在も3500人が避難施設に
2025年11月28日、タイ南部を襲った大洪水は、歴史的な激甚災害へと発展しています。
死者は85名に達し、被災者は約295万人。ハジャイでは「300年に一度」とされる記録的な降雨量を観測しました。軍による決死の救助活動と、アヌティン内務大臣(兼副首相)が発表した救済策について、最新情報をまとめます。
被害の現状:死者85名、経済損失880億円
当局の発表によると、今回の洪水は過去数十年の南部水害で最悪レベルです。
現在も在タイ日本大使館からは、不要不急の渡航を控えるよう注意喚起がでています
在タイ日本大使館からのお知らせ
人的・物的被害
- 死者数:
85名(ソンクラー県だけで55名)。主な死因は溺死と感電死です。 - 被災規模:
南部9県で約295万人(約108万世帯)が影響を受けています。 - 経済損失:
商工会議所大学の試算では、総額200億バーツ(約880億円)を超える見込み。農業、観光に加え、ハジャイ市内で多数の高級EV車が水没・全損したことによる損害が甚大です。
インフラの壊滅
ハジャイ国際空港はアクセス道路の冠水により孤立状態が続いています。鉄道(南部線)も路盤流出により運行不能。電力・通信網も一部で遮断されており、完全な都市機能麻痺状態です。
政府・軍の対策:空母とヘリによる総力戦
事態を重く見た政府は、軍のリソースをフル投入した救助作戦を展開しています。
病院からの緊急空輸
1階が浸水し600人の患者が取り残されたハジャイ病院に対し、空軍のH225Mヘリコプターなどが投入されました。
- 物資輸送:
酸素ボンベや発電機を空輸。 - 患者避難:
新生児12名を含む重症患者を、ヘリコプターで安全な場所へ避難させました。本日中に集中治療室の全患者を搬送予定です。
空母「チャクリ・ナルエベト」の展開
タイ海軍は国内唯一の空母をソンクラー沖に展開。「洋上の病院・調理場」として機能させ、ヘリコプターやボートの拠点として活用しています。陸海空軍合わせて3,000人以上の兵士が現地入りしています。
復興への道:3段階の救済戦略
アヌティン内務大臣は、「国民にとって一秒一秒が重要だ」として、以下の3段階の救済戦略を発表しました。
- フェーズ1:食料と避難所への即時アクセス確保。
- フェーズ2:被災者の債務返済の一時停止。
- フェーズ3:住宅修理のためのゼロ金利ローンの提供。
関連ニュース
政府の救済措置
9,000バーツ(250ドル)の補償や死亡見舞金制度、修繕費への補助や控除政策が続々と発表や検討されています。
タイ軍本格的な空輸作戦開始
ハジャイに必需品を届け、重症患者を避難させるための大規模な空輸作戦を開始
警察庁「身元確認オペレーションセンター」設置
ハジャイ洪水で増え続ける行方不明者・遺体確認を迅速化するため、警察庁長官が特別チームを立ち上げ。
司法鑑識や科学捜査部門を総動員し、DNA照合と身元特定を集中実施。被災地のプリンス・オブ・ソンクラー大学(PSU)などに臨時検視拠点を配置。
南部陸路交通:概ね平常化へ
路局によると、主要幹線道路の冠水はほぼ解消し、通行止めは局地的。
ただし一部区間では路肩崩落や土砂流入が残るため、走行前に最新情報の確認と代替ルート利用を推奨。
バス運行:一部再開・4路線停止中
国営バス公社(ボーコーソー)は、ハジャイ発着便のうち安全確認済み区間の運行を再開。
しかし市内の主要交差点や幹線の浸水が残るため、依然4路線が運休。段階的に再開を進める予定。
ハジャイ郡長を職務停止
内務省は、洪水発生中に連絡不能・現場不在だった郡長を「職務怠慢および不正疑惑」で調査のため停職処分。
洪水対策指揮系統の混乱が批判され、調査終了まで副郡長が代理を務める。
南部洪水向けの寄付呼びかけ
銀行:Siam Commercial Bank(SCB)
口座番号:045-3-04637-0
もしくは寄付ポータルサイト:https://donationhub.or.th
経由でクレジットカード等から寄付可能
まとめ
ハジャイの水位はピークを越えつつありますが、強い流れが救助を阻んでおり、依然として予断を許しません。
一般企業からの寄付や救援物資が届いたりしていますが、まだまだ予断を許さない状況です。タイホンダは水没被害のバイクの無償修理や一般企業からの寄付、そして民間の方がからの寄付や救援物資の募集がバンコクでは行われています。
今回の洪水は「300年に一度」と言われるほどの規模であり、人間の想定を遥かに超える自然の猛威を見せつけられました。一方で、新生児をヘリで救出する軍の連携や、即座に債務停止を打ち出す政府のスピード感には、タイの危機管理能力の底力を感じます。
被災地への募金や支援物資の寄付など、私たち在住者にもできることはあるかもしれません。引き続き、正確な情報を得て行動しましょう。
この記事の出典
本記事は以下の現地報道および公式発表を基に作成しました。
- Reuters / AP News
- Bangkok Post
- Kathmandu Post
この記事を書いた人
keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
タイムラインバンコク編集部
Facebook(keita satou)
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