タイ・カンボジア国境紛争で被害拡大。タイ軍「敵兵61名死亡」と発表、カンボジア側は否定
国境での砲撃戦は激しさを増し、発表される被害者数も桁が変わってきました。
2025年12月10日、タイ第2軍管区は自国軍の被害状況を公表すると同時に、カンボジア軍に対して甚大な被害を与えたと発表しました。しかし、カンボジア側はこの主張を真っ向から否定しており、現場では「情報戦」の様相も呈しています。
今回は、12月10日時点での最新の被害状況と、食い違う両国の主張について解説します。
出典:Al Jazeera
タイ側の被害(公式発表)
タイ第2軍管区(東北部担当)が12月9日夕方時点として公表した、タイ軍の人的被害は以下の通りです。
- 死者:4名(兵士)
- 負傷者:68名(兵士)
前日までの「死者1名」から増加しており、戦闘の激化を裏付けています。原因として、カンボジア側から約5,000発ものBM-21ロケット弾や、33機の自爆型ドローンによる攻撃を受けたと説明されています。
カンボジア側の被害(主張の対立)
一方、カンボジア側の被害については、「タイ軍の推計」と「カンボジア政府の発表」で数字と内容が全く異なっています。
A. タイ軍の主張「敵兵61名が死亡」
タイ第2軍管区は、自軍の反撃(砲撃・空爆)により、カンボジア軍兵士61名が死亡したと発表しました。
これはタイ側の戦果報告であり、相手の戦力を削いだことをアピールする狙いがあります。
B. カンボジア側の反論「フェイクニュースだ」
これに対しカンボジア国防省は、兵士の大量死について「心理戦を狙ったフェイクニュースだ」と強く否定しています。
その代わりカンボジア側が強調しているのは、民間人の被害です。
- 民間人死者:約7〜9名
- 民間人負傷者:約20名
カンボジアのカジノ施設が「軍事目標」に。
F-16と戦車で破壊
2025年12月9日、事態は新たな局面を迎えました。タイ軍が国境沿いにある「カンボジア側のカジノ施設」を軍事拠点と認定し、空爆および砲撃で破壊しました。
これまで国境貿易や観光の拠点であったカジノが、物理的に破壊されるという衝撃的な展開です。
攻撃された場所と方法
- ウボンラチャタニ県(チョン・アナマー対岸): タイ空軍のF-16戦闘機が空爆を実施。施設の一部が黒煙を上げて破壊されました。
- サケーオ県(タプライヤ対岸): タイ陸軍の戦車部隊が主砲を発射し、カジノ複合施設を破壊しました。
タイ軍(第1・第2軍管区)は、攻撃の正当性について以下のように主張しています。
- 「当該カジノは純粋な民間施設ではなく、カンボジア軍の指令センターや武器弾薬庫として悪用されていた。また、屋上が攻撃用ドローンの発着基地となっていたため、無力化した」(タイ軍発表)
カンボジア側は「民間施設への攻撃だ」と反発していますが、タイ側は「精密攻撃による軍事目標の排除」との立場を崩していません。
これにより、国境付近のホテルやカジノ施設は、いつ攻撃対象になってもおかしくない「極めて危険な場所」となりました。興味本位での宿泊や立ち寄りは絶対にやめてください。
外務省の発表

出典:外務省
まとめ:数字が語る激戦の真実
両国の発表にはプロパガンダ(宣伝戦)の側面が含まれており、正確な数字を把握するのは困難です。しかし、以下の事実は間違いありません。
- タイ兵4名が死亡、68名が負傷するほどの激戦であること。
- カンボジア側の民間人にも死者が出ていること。
SNSでは両国の感情を敵視するような情報戦が過熱しています。我々日本人は、外務省の発表のように冷静な対応と平和的解決を支援するほかありません。またトランプ大統領のような関税を盾にした外交政策も再燃しかねません。また国境付近にはいかなる理由があろうとも絶対に立ち入らないでください。
ロケット弾5,000発という数字は異常です。これは局地的な衝突のレベルを超えています。
「どちらが勝っているか」というニュースに惑わされず、旅行者や在住者の方は「そこが戦場である」という事実だけを見て、国境エリアには絶対に近づかないでください。
この記事の出典
本記事は以下の現地報道および公式発表を基に作成しました。
- Nation Thailand
- TASS
- Inquirer
- Al Jazeera
この記事を書いた人
keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
タイムラインバンコク編集部
Facebook(keita satou)
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2025年12月10日 09:30(現地時間) |著者: Keita Satou

