日本の魚は安全 中国の日本産水産物を禁輸もタイは現在の姿勢を崩さず
2025年11月、中国が再び日本産水産物の輸入を全面的に停止する準備を進めていると、タイの主要メディア(Thairathなど)が報じました。2023年の福島処理水放出時に続く「2回目」の禁輸措置です。
しかし、タイ政府(食品医薬品局/FDA)はこれに同調せず、現時点では「輸入継続」の姿勢を崩していません。タイのメディアは、なぜ中国は再び禁輸に踏み切ったのか、そしてタイが冷静な対応を続ける理由について解説します。
1回目(2023年)の禁輸とタイの対応
まずは経緯を振り返ります。2023年8月、福島第一原発の処理水海洋放出を受け、中国は即座に日本産水産物の全面禁輸を発表しました。
当時、周辺国が動揺する中、タイのFDAは冷静でした。「科学的根拠に基づき、基準値以下なら輸入する」と発表し、独自の厳格な検査体制を敷いた上で、輸入を継続しました。その結果、基準値を超える放射性物質は検出されず、タイ国内では日本産水産物が安全に流通し続けました。
またその際に、中国の禁輸措置開始以降、タイの大手財閥「CPグループ」が日本側築地市場や鮮魚卸と連携し、タイ国内で「日本産鮮魚・寿司」の流通強化・店舗展開が進んでいます。
- 背景:2023年~中国の日本産水産物全面禁輸により、日本の鮮魚業者・市場(例:築地・豊洲)はアジアの新興市場(タイ・ベトナムなど)開拓を加速。
- CPグループ(Charoen Pokphand):タイ国内最大財閥で、飲食小売やスーパーマーケットを展開する大手。既存流通網や販売力を活用し、東京都内「魚力」と連携し日本産鮮魚の直輸入・販路開拓。
タイでは中間層~富裕層の間や都市部で“本物の日本鮮魚・寿司”人気が拡大中。中国向け禁輸の影響で“高品質品”も流入しやすくなった」と分析。
日本の水産物業者=中国に依存せず販路多様化するメリット
タイ消費者=高級生鮮・和食バリエーション増、CPのブランド価値向上。
タイFDAの発表について
出典:JETROhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2023/09/bea0b35675a0085e.html
今回(2回目)の禁輸の背景:「台湾問題」
そして今回、2025年11月の「再禁輸」です。中国側は表向き「処理水の監視強化」を理由に挙げていますが、タイメディア(Thairath、Bangkok Biz Newsなど)は、別の見方を報じています。
Thairath:「จีนห้ามนำเข้าปลาญี่ปุ่น อาจเป็นการลงโทษยุทธศาสตร์ทางเศรษฐกิจ ไม่ใช่เหตุผลด้านความปลอดภัยเพียงอย่างเดียว」
(中国の日本産魚禁輸は、単なる安全問題でなく“戦略的経済制裁”の性格とも言える)
Bangkok Biz:「มาตรการนี้ส่งผลต่อเศรษฐกิจระหว่างประเทศ และอาจถือเป็นแรงกดดันทางเศรษฐกิจ」
(今回の措置は国際経済に影響し、“経済的圧力”とみなされる可能性もある)
実態は「外交的報復」か
報道によると、今回の措置は日本政府要人(高市首相)による「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」という発言に対する、中国側の外交的な報復であるとの見方が強まっています。
つまり、今回の禁輸は「食の安全」というよりも、「台湾問題を巡る政治的なカード」として日本の水産物が利用された側面が強いと分析しています。
タイは「沈黙」を貫く(輸入継続)
こうした中国の動きに対し、タイ政府はどう対応しているのでしょうか。
結論から言えば、タイ政府(FDA)からは今回の件に関して新たな規制強化の発表はありません。これは、前回同様「科学的根拠に基づけば安全性に問題はない」として、静観・輸入継続の姿勢を貫いていることを意味します。
タイ国内では引き続き日本産水産物が流通しており、むしろ中国へ輸出できなくなった高品質な魚がタイへ流入することで、消費者にとってはメリットになる可能性すらあります。
まとめ
CPグループによるタイのローカルスーパーによる築地からの直送のお寿司の販売やセブンイレブンでも気軽に日本クオリティのお寿司を食べることができるようになったバンコク都市部。またSNSの世論でもこれでまた日本の高品質の寿司が食べれるようになったという意見も散見されました。
中国の再禁輸措置は政治的なパフォーマンスの側面が強く、タイはそれに惑わされず、あくまで科学的根拠と自国の検査基準に基づいて冷静に対応しています。
タイ在住者や旅行者の皆様は、タイ当局の厳格な監視体制を信頼し、引き続き安心して美味しい日本の魚を楽しんでください。
この記事の出典
この記事を書いた人
keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
タイムラインバンコク編集部
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