【タイ】バーツ高抑制へ「金取引の監視」と「外貨持ち出し枠拡大」を発表
2025年はタイバーツが対米ドルで約4年ぶりの高値で12月現在も(1バーツ=4.91円・1ドル=31.46バーツ前後)を記録し、急激な「バーツ高」が進行中です
輸出や観光業への悪影響を懸念したタイ政府と中央銀行(BoT)は、ついに為替相場の安定化に向けた具体的な対策に乗り出しました。ターゲットになったのは「金(ゴールド)」と「企業の外貨」です。
今回は、タイ中銀が打ち出した規制強化と緩和策の詳細、そして今後の見通しについて解説します。

なぜ今?バーツ急騰の背景
今年に入り、バーツは対ドルで約7〜9%上昇し、アジア通貨の中でもトップクラスの強さを見せています。
- 米ドル安:FRBの利下げ観測によるドル売り。
- 観光回復:ハイシーズン入りによる外貨流入。
- 金価格高騰:金トレーダーによる活発な取引(ドル売り・バーツ買い)が相場を押し上げ。
対策①:金(ゴールド)取引の監視強化
中銀は、金取引に伴う為替変動(ボラティリティ)を抑えるため、以下の厳しい措置を銀行に指示しました。
実需証明の義務化
金トレーダーが為替先物取引を行う際、それが「実際の輸出入」に基づくものであることを証明する書類(インボイス等)の提出が必須となります。
しかも、提出期限は取引後「2営業日以内」と非常に厳格です。
大手業者の報告義務(検討案)
年間売上100億バーツ以上の大手金事業者に対し、詳細な取引データの報告を義務付ける案も進められています。
マネーロンダリング対策とも
タイ中央銀行(BoT)が今回打ち出した「実需証明(インボイス等)の義務化」や「大手業者の取引データ報告義務」は、単なる為替対策だけでなく、以下のマネロン対策としての側面も強く持っています。
- 「グレーマネー」の排除: 規制強化の発表の中で、中銀は「疑わしい『グレーマネー』の流れへの対処を支援する」と明言しています。 これは、中国人犯罪グループ(いわゆる「チャイニーズ・グレービジネス」)などが、不正に得た資金を「金取引」を通じて洗浄したり、海外へ送金したりするルートを断つ狙いがあります。
- 投機筋の特定: 実需(輸出入)に基づかない投機的な取引を炙り出すことで、不正資金の流入・流出を監視しやすくなります。
バーツ高との関係、不正資金(グレーマネー)がタイ国内の金市場に大量に流入し、それがバーツ買い・ドル売りの圧力となってバーツ高を加速させていた可能性があります。 マネロン対策として金取引を厳格化することは、結果として「投機的なバーツ買い」を抑制し、為替の安定化にも寄与するという「一石二鳥」の策と言えます。
対策②:外貨の「流出」を促す緩和策
一方で、企業が外貨をタイ国内に戻さなくて済むような「緩和策」も打ち出しています。
- 外貨還流義務の緩和:
輸出企業が外貨収入を海外口座に留保できる上限を、現在の「100万ドル」から「1,000万ドル」へ大幅に引き上げます。これにより、無理にバーツに換える必要がなくなります。 - 海外送金枠の拡大:
企業が海外投資や債務返済のために送金できる上限も「1,000万ドル」まで拡大し、バーツ売り・外貨買い(アウトフロー)を促進します。
まとめ:旅行者への影響は?
今回の規制強化は、主に企業や金トレーダーの投機的な動きを封じ込めるものであり、一般の旅行者や生活者の両替・送金には直接的な規制はありません。
バーツ高は在住者にとっては(日本円資産の目減りという意味で)頭の痛い問題ですが、輸入製品や海外旅行が安くなるメリットもあります。また新規の海外進出を目指す企業にとっても初期投資は割高に感じますがバーツでの売り上げの黒字化ができると大きなメリットとなります。
今回の規制で都市伝説のようにまことしやかに噂されていた、特殊詐欺などのグレーマネーのマネーロンダリングがバーツ高に起因しているのではないか?という噂もあながち都市伝説ではないのかもしれません。
一方で、タイ経済の柱である輸出と観光にとっては深刻な逆風です。政府がここまで素早く動いたことは、事態の深刻さを物語っています。今後の為替レートの動き、特に17日の金融政策決定会合には要注目です。
この記事の出典
本記事は以下の現地報道および公式発表を基に作成しました。
- Bloomberg: Thai Baht Surges
- The Nation Thailand
- Thai Examiner
この記事を書いた人
keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
タイムラインバンコク編集部
Facebook(keita satou)
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