【タイ南部洪水】死者33人、被災者270万人空母派遣の非常事態。同時に浮上した「EV水没」の深刻な保険リスク
2025年11月27日、タイ南部を襲った大洪水は、死者33人、被災者270万人という未曾有の災害に発展しています。
政府は非常事態を宣言し、海軍の空母やヘリを派遣。しかし、水が引いた後に待ち受けているのは、普及が進んだ電気自動車(EV)の「水没全損」という新たな経済的危機でした。
空母派遣、死者33人。災害レベルは「最高」へ
出典:Associated Press
ハジャイを中心とする南部7〜12県での被害は拡大の一途をたどっています。
- 人的被害:
死者は33人に達し、270万人(約98万世帯)が被災しています。屋根の上に避難している住民も多数おり、予断を許さない状況です。 - 空母「チャクリ・ナルエベト」派遣:
タイ海軍は、洋上病院および調理拠点として空母をソンクラー沖に展開。ヘリコプターによる空輸作戦を開始しました。これは2011年の大洪水以来となる、国家レベルの非常事態であることを意味します。 - 空港・病院の孤立:
ハジャイ国際空港は周辺道路が冠水し「陸の孤島」化。主要病院も浸水し、重症患者のヘリ搬送が行われています。
もう一つの危機:「EV保険」の崩壊
今回の洪水は、「EVハブ」を目指すタイにとって初めて直面する大規模な試練となりました。水没した車両の中に多くのEVが含まれており、保険業界に激震が走っています。
損害率120%の衝撃
タイ損害保険協会の発表によると、EV向け自動車保険の損害率はすでに約120%(赤字状態)に達していましたが、今回の洪水でさらに悪化することが確実です。
- 水没=即全損(Total Loss):
ガソリン車なら修理で済む浸水でも、床下にバッテリーがあるEVは交換費用が車体価格の7〜8割を占めるため、保険会社は「全損(修理不能)」として処理せざるを得ません。 - 保険料高騰の懸念:
この事態を受け、来年以降のEV保険料が20〜30%以上値上がりする可能性や、洪水リスク地域での引き受け拒否が懸念されています。
まとめ
現在、タイ南部への移動は不可能です。航空各社も欠航を決めており、無理な移動は命に関わります。EV車への水害リスクは発表当時に巷でも話題になっていましたが、本格的にろけんした形になりました。
今回の災害は「気候変動による洪水」と「急速なEV化の水害リスク」という2つの大きな想定外の経済損失を生んでいるように見えます。
特にハジャイのような経済都市でEVが大量に水没したことは、今後のタイでの車選びや保険制度に大きな影響を与えるでしょう。環境に配慮したはずのEV車が「環境に弱い」というEVの弱点が、皮肉な形で露呈してしまいました。
この記事の出典
本記事は以下の現地報道および公式発表を基に作成しました。
- Reuters / AP News: 洪水被害詳細
- Associated Press
- Bangkok Post: 南部洪水状況
この記事を書いた人
keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
タイムラインバンコク編集部
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