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バンコク列車が半額以下の大幅値下げ(20バーツ)!本当の理由とは?

バンコクのBTSと都市鉄道一律20バーツ運賃制度の解説
Thaim Line Bangkok

2025年10月1日から、バンコクの都市鉄道(BTS・MRT・ARLなど全8路線)で「一律20バーツ運賃」制度が導入されます。長距離では半額以下の大幅な値下げとなりますが、短距離では逆に実質値上げとなる区間もあり、旅行者や在住者の間で注目を集めています。だが、その一律運賃には単なる値下げにとどまらない、政府の狙いと“裏の事情”が潜んでいます。


制度の概要

バンコクの鉄道運賃はこれまで距離制を採用しており、BTSでは最大47バーツ、MRTブルーラインでは最大51バーツ、ガイドによっては59バーツまでかかる場合もありました。しかし、新制度では路線ごとに「入口から出口まで一律20バーツ」に統一されます。

バンコク鉄道路線図(BTS・MRT・ARL・SRT 各路線)。スクンビット線、シーロム線、ブルーライン、空港線などを日本語で表示した地図。
最新バンコク路線図【2025年度版】 引用元:https://www.thailandtravel.or.jp/

対象となる路線

  • BTS(スクンビット線・シーロム線)
  • MRT(ブルーライン・パープルライン)
  • エアポートレールリンク(ARL)
  • その他:ゴールドライン、レッドライン、ピンクライン
バンコクを走るBTSスカイトレイン(高架鉄道)
BTSスカイトレイン
バンコクMRT イエローライン 車両
バンコクの都市鉄道MRT(地下鉄・高架鉄道)のイエローライン車両 引用元:https://www.transitbangkok.com/mrt.html
バンコクのエアポートレールリンク(ARL)
エアポートレールリンク(ARL)
  • BTS(スカイトレイン)
  • スクンビット線(ライトグリーン)やシーロム線(ダークグリーン)など、主要2路線が含まれています。
  • MRT(地下鉄)
  • ブルーライン、パープルライン、ピンクライン、イエローラインなど、複数の路線が接続されています。
  • Airport Rail Link(ARL/エアポートリンク)
  • スワンナプーム空港と市内中心部を結ぶ鉄道路線も表示。
  • SRTレッドライン
  • 都市および周辺県への通勤鉄道(ダークレッド/ライトレッド)。
  • その他:モノレールのゴールドライン、さらには予定中の路線(オレンジラインなど)も含まれており、将来全体像を把握するのにも役立ちます。

メリットとデメリット

メリット: 長距離利用では最大で半額以下となり、空港アクセスや郊外からの通勤に大きな効果があります。特にモーチットやスワンナプーム空港などから中心部まで移動する場合は、従来より20〜30バーツ以上お得になります。

デメリット: 短距離移動では逆に値上げとなるケースがあります。従来は16〜19バーツだった1〜3駅区間も、20バーツに統一されるため、旅行者が多く利用する中心部の短距離では「実質値上げ」となります。

この制度のキーポイント(実はタイ人のみしか利用できない)

  • 「Tang Rat(ทางรัฐ)」アプリでの事前登録が必須
  • 登録には タイ国民の身分証明書(Thai National ID) が必要
  • 運賃補助は タイ国民を対象とした制度 として設計されています
そのため、現状では 外国人旅行者や在住者がパスポートで登録して利用することはできません。※従来料金のままで値上げも値下げも発生しない

政府の狙いと背景

この制度の背景には、バンコクの深刻な交通渋滞があります。郊外から車で通勤する人々を鉄道に誘導することで、慢性的な道路混雑を和らげる狙いがあります。実際、バンコクの道路は世界でも最悪レベルの渋滞とされ、通勤ラッシュ時には鉄道の乗車率も高騰しています。
さらに政府は、単なる交通費の値下げではなく、生活費負担の軽減と環境対策も目的としています。20バーツという価格は最低賃金の10%以下に抑えられており、低所得層の通勤を支援しつつ、自家用車から公共交通への転換を促す狙いです。また、排ガス削減やPM2.5対策といった環境改善の側面も含まれています。
ただし、この制度はタイ国民を対象としたものであり、外国人旅行者や在住者は利用できません。表向きは観光支援に見えるものの、実際には「タイ人通勤者の行動変容」に焦点を当てた施策といえるでしょう。
バンコク市内の渋滞の様子
慢性的な渋滞が続くバンコクの道路事情

旅行者への影響

現時点では、この制度はタイ国民向けの「Tang Rat」アプリ登録が必須であり、日本人旅行者を含む外国人は対象外です。ただし、将来的に外国人にも適用が拡大すれば、空港から市内移動や地方観光のコストが大幅に下がる可能性があります。

まとめ

一見すると観光支援策のように見える「一律20バーツ運賃」ですが、実際には外国人(旅行者・在住者)は対象外です。政府の狙いは観光促進ではなく、タイ人通勤者を車から鉄道にシフトさせ、慢性的な交通渋滞や大気汚染を和らげることにあります。

日本では外国人観光客に向けた交通優遇制度が数多く実施されていますが、タイの今回の制度はあくまで国民優先の仕組みです。いずれにせよ、両国ともにインバウンド政策や庶民への生活支援に力を入れており、その動向は今後も注目されます。

【追記:2025年8月27日】
当初2025年10月1日から導入予定だった「一律20バーツ運賃」ですが、必要となる関連法案の成立が遅れているため、開始時期は11月に延期される見通しです。
スリヤ運輸大臣は「国民にご迷惑をおかけするが、準備が整い次第速やかに実施する」とコメントしています。

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タイムラインバンコク編集部
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タイムラインバンコク編集部は、バンコクに在住する経験豊富な編集者とライターからなる専門チームです。日本人メンバーだけでなく、日本語能力試験N1を持つタイ人メンバーも在籍しており、多様な視点から情報を捉えることを大切にしています。 インターネット上の情報だけでなく、実際に現地へ足を運び、独自の取材・調査を行うことを信条としています。グルメ、ビューティー、最新ニュースからカルチャーまで、バンコクで暮らす人、訪れる人にとって本当に価値のある、正確で信頼できる情報を厳選してお届けします。日本のメディアに情報提供することもあります。
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