MENU

狂犬病について解説 バンコクでも感染リスクのあるタイ 旅行者・在住者が知っておきたい情報。

狂犬病感染のリスクがあるバンコクの野生動物」と書かれた縦型サムネイル。凶暴な犬、猫、サル、コウモリ、泡を吹くネズミのイラストが、それぞれ枠内に配置されている。
Thaim Line Bangkok
タイ、特に首都バンコクでも狂犬病の感染リスクが高まっています。タイ家畜振興局およびバンコク都は、バンコク都内および隣接するサムットプラーカーン県の一部地域を「狂犬病流行一時指定地域」に設定し、厳重な警戒を呼びかけています。発症するとほぼ100%致死的な狂犬病から身を守るために、タイを訪れる旅行者の方も、在住者の方も、必ず知っておきたい予防策、緊急対処法、関連情報、そしてバンコクの動物病院SOMA VET Clinic Bangkokからの提供された情報をまとめました。

【この記事の要点】

  • バンコク都・サムットプラーカーン県の一部地域が狂犬病流行一時指定地域に設定。(2025年9月9日〜10月8日)
  • 狂犬病の基本的な知識と日本・世界の状況の違い。
  • 事前の予防接種(曝露前ワクチン)と、万が一咬まれた際の緊急処置(暴露後ワクチン)の重要性。
  • 感染する可能性のある動物への注意喚起と、発見時の通報先。
  • タイの病院での受診方法と費用目安。

最新情報 バンコク都・サムットプラーカーン県で狂犬病発生!

タイ家畜振興局とバンコク都は、2025年9月9日にバンコク都プラウェート区ノンボン地区で狂犬病感染事例が確認されたことを受け、以下の地域およびその周辺5km圏内を「狂犬病流行一時指定地域」に設定しました。この指定期間は2025年9月9日から10月8日までとされており、この間、該当地域では犬や猫などの哺乳類の移動が制限されます。

警告対象となっている主な地域

バンコク都
  • プラウェート区 (Prawet)
  • スワンルアン区 (Suan Luang)
  • ラートクラバン区 (Lat Krabang)
  • サパーンスーン区 (Saphan Sung)
  • バンナー区 (Bang Na)
  • プラカノン区 (Phra Khanong)
サムットプラーカーン県
  • バーンプリー郡 (Bang Phli)
これらの地域に滞在されている方、または訪問予定のある方は、特に厳重な注意が必要です。

狂犬病とは?世界と日本の違い、そして予防の重要性

狂犬病は、狂犬病ウイルスを持つ動物に咬まれたり、引っかかれたりすることで感染する人獣共通感染症です。ウイルスは傷口から体内に侵入し、神経を伝わって脳に達することで発症します。
一度発症すると有効な治療法はなく、ほぼ100%致死に至る極めて危険な病気です。

発症確率とその要因

咬まれた動物が狂犬病に感染していた場合の発症確率は、咬傷の部位、深さ、ウイルス量、そして何よりも「曝露後処置(ワクチン接種)をいかに迅速に行ったか」によって大きく変動します。※曝露=ばくろ
  • 咬傷部位: 脳に近い顔や首、手足の指などの神経が豊富な部位ほど、ウイルスが脳に到達する時間が短く、発症リスクが高いとされています。
  • 傷の深さ・程度: 深く、広範囲な傷ほどウイルス量が多く、リスクが高まります。
  • 迅速な処置: しかし、最も重要なのは、咬まれた後にすぐに傷口を洗浄し、直ちに病院で暴露後ワクチン接種を開始することです。これにより、ウイルスの増殖を抑え、発症をほぼ確実に防ぐことができます。
このため、「咬まれたら必ず発症する」わけではありませんが、「発症したら助からない」ため、予防と迅速な行動が命を救う鍵となります。

世界と日本の状況の違い

  • 日本: 狂犬病清浄国であり、国内での感染報告は1957年以降ありません。そのため、日本国内で狂犬病について意識することは少ないかもしれません。
  • 世界(特にアジア): 多くの国では依然として狂犬病が流行しており、毎年数万人の死者が出ています。タイもその一つであり、野良犬や野良猫が多く、感染リスクが常に存在します。日本での感覚で安易に動物に近づくのは大変危険です。

予防接種(曝露前ワクチン)について

狂犬病ワクチンには、事前に接種しておく「曝露前ワクチン」と、動物に咬まれた後に接種する「暴露後ワクチン」があります。
  • タイへの長期滞在者や頻繁な渡航者、動物との接触が多い方: 事前の曝露前ワクチン接種を強くお勧めします。通常、3回の接種が必要で、事前に免疫をつけておくことで、万が一咬まれた際の発症リスクを低減し、暴露後ワクチンの回数を減らすことができます。

事前ワクチンを3回かならず旅行者も打つというのは現実的ではないと思います(強い副作用もあり、業務スケジュールなどへ影響も) 在留者、旅行者に限らず、路上の哺乳動物には絶対に近づかないことです。

タイ家畜振興局・バンコク都からの呼びかけ

タイ当局は、ご自身のペット(犬・猫)の狂犬病ワクチン接種を最新の状態に保つよう強く求めています。ペットを守ることは、地域社会全体の安全を守ることに繋がります。

万が一、動物に咬まれた・接触した場合の緊急対処法

狂犬病は発症前の適切な処置が命を救います。落ち着いて、以下の手順で迅速に行動してください。

即時(当日~24時間以内)

迅速な洗浄: まず、咬まれたり引っかかれたりした傷口を直ちに(できれば24時間以内に)石鹸と流水で15分以上徹底的に洗浄すること
(その時点で発症リスクを約1/3低下)
さらにワクチン(+必要ならRIG)を規定通り行えばほぼ100%予防できます。

24–48時間

開始価値は十分にあり:WHO推奨スケジュール「受傷当日(D0)、3日後(D3)、7日後(D7)、14〜28日後(D14-28)にそれぞれワクチンを接種する」を完遂すれば高い有効性。

数週間〜数か月の遅延

免疫応答の低下や致死的転帰につながり得る、という公衆衛生当局の注意喚起あり。

実体験からの警告:曝露後ワクチンの厳しさ

私の友人にも、バンコクでネズミと野良猫に咬まれ、狂犬病の曝露後ワクチン接種を経験した者が2名います。彼らは、複数回のワクチン接種(通常5回)に加え、接種後に高熱に悩まされるなど、心身ともに大変な思いをしたと語っていました。
この経験談は、単に咬まれないようにするだけでなく、万が一の場合の医療処置の負担の大きさをも示唆しています。安易な接触は避け、予防と迅速な対応がいかに重要であるかを改めて認識してください。

狂犬病に感染する可能性のある動物と異常時の通報先

狂犬病感染のリスクがあるバンコクの野生動物のコラージュ画像。上段左から凶暴な表情の犬、右に座る猫。中段左からビニール袋を持つサル、右にぶら下がるコウモリ。下段左から泡を吹くネズミと、右に「狂犬病感染のリスクがあるバンコクの野生動物」というテキスト。
哺乳類全般が感染のリスクのある動物です。
狂犬病ウイルスは、犬や猫だけでなく、キツネ、コウモリ、アライグマ、サルなど、多くの哺乳類が保有し、感染源となる可能性があります。タイでは特に野良犬や野良猫やねずみが多いため、警戒が必要です。
特にバンコクでは、多くの人が集まる観光地や市場、公園などで、エサを与えられることに慣れた野良犬や野良猫が多く見られます。見た目は穏やかでも、不意に触ろうとしたり、食べ物を与えようとしたりした際に、予期せず咬まれたり引っかかれたりするリスクがあります。また、市街地でも野生のサルや、コウモリなども生息しているため、これらの動物にも注意が必要です。

絶対に近づかない・触らない

野良犬・猫、その他哺乳動物には絶対に近づかない、触らないでください。どんなに可愛らしく見えても、予期せぬ行動を取る可能性があります。特に小さなお子様連れの方は、お子様が動物に興味を示して近づかないよう、常に目を配ってください。

狂犬病が疑われる動物を発見した場合

落ち着きがない、攻撃的、よだれを大量に垂らしている、歩行がおかしいなど、異常な様子を示す動物や、死骸を発見した場合は、決して近づかず、以下の機関に通報してください。
プラウェート犬管理・保護グループ
  • 電話番号:02-328-7460 / 02-328-7355
  • (バンコク都内の他の区でも、同様の動物保護・管理機関が存在します。該当区の情報を確認するか、警察や地方自治体を通じて問い合わせてください。)

タイの病院での受診:公立と私立の選択肢

万が一動物に咬まれた場合、タイでの病院選びは費用と待ち時間に影響します。

公立病院(Government Hospital)

  • 費用: 比較的安価(狂犬病ワクチン5回接種で約1,500バーツ程度)。
  • 特徴: 待ち時間が長くなる傾向があります。タイ語でのコミュニケーションが必要な場合もありますが、主要な病院では英語対応可能なスタッフもいます。
バンコクの主な公立病院
  • チュラロンコーン病院 (King Chulalongkorn Memorial Hospital)
    バンコク中心部に位置する大規模な総合病院。
    英語ページ
  • ラマティボーディー病院 (Ramathibodi Hospital):
    こちらも主要な大学病院の一つで、高い医療水準を誇ります。
    英語ページ
  • シリラート病院 (Siriraj Hospital):
    チャオプラヤー川沿いに位置する、タイ最古かつ最大の病院。
    英語ページ
日本語対応がある私立病院(Private Hospital)
  • 費用: 高額になります(公立よりは高価)
  • 特徴: サミティベート病院バンコク病院メドパーク病院バムルンラード病院など、日本人スタッフや通訳がいる病院も多く、より迅速で質の高いサービスが期待できます。
  • 注意点: 海外旅行保険が適用されるか、事前に確認しておくことを強くお勧めします。保険の種類によってはキャッシュレス診療が可能な場合もあります。

まとめ

バンコクを含むタイの一部地域で狂犬病の感染リスクが高まっている現在、旅行者も在住者も、この危険な病気に対する正しい知識と準備が不可欠です。野生動物や野良犬、猫には絶対に近づかず、ペットのワクチン接種を徹底し、万が一咬まれた場合は「すぐに洗浄、すぐに受診、すぐに接種」の原則に従って迅速に行動してください。発症前の適切な処置が、あなたの命を守ります。タイでの安全で楽しい滞在のために、この重要な情報を心に留めておきましょう。また保護活動は然るべき専門機関に集約して安易に「良いことをしたい」と安易な気持ちで手を出さず、公衆衛生の意識と知識と責任感を高く正しく持って距離を各個人がただしく取る姿勢を保つことも大事だと思います。
この記事を書いた人
keitasatou:タイムラインバンコク編集者
バンコク在住10年以上ライター、バンコクで複数のSNSを運用しておりフォロワー総数は7万人以上。ライターという特殊な職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。Facebook

参考文献と情報提供

関連記事

最終更新日:参考文献を追加 SOMA VET Clinicからの情報を追記

about me
タイムラインバンコク編集部
タイムラインバンコク編集部
ライター
タイムラインバンコク編集部は、バンコクに在住する経験豊富な編集者とライターからなる専門チームです。日本人メンバーだけでなく、日本語能力試験N1を持つタイ人メンバーも在籍しており、多様な視点から情報を捉えることを大切にしています。 インターネット上の情報だけでなく、実際に現地へ足を運び、独自の取材・調査を行うことを信条としています。グルメ、ビューティー、最新ニュースからカルチャーまで、バンコクで暮らす人、訪れる人にとって本当に価値のある、正確で信頼できる情報を厳選してお届けします。日本のメディアに情報提供することもあります。
記事URLをコピーしました