特殊詐欺・麻薬密輸を撲滅へ。タイ警察と大阪府警が連携強化 最新技術の共同捜査体制へ
タイ警察中央捜査局(CIB)のジラポップ・プリデ局長率いる代表団が大阪府警を訪問し、国際化する犯罪への対策として、両機関の協力関係を強化しました。今回の訪問では、特に巧妙化するコールセンター詐欺やサイバー犯罪への対策が中心議題となりました。

訪問の目的:日本のハイテク捜査と防犯技術
今回の訪問の最大の目的は、国境を越える犯罪に共同で対処するための協力関係強化です。タイ警察は日本の警察が持つ知見、特に以下の分野に関心を寄せており、それらの技術革新を取り入れタイ警察全体の業務効率を高める狙いもあります。
- サイバー犯罪捜査: オンライン詐欺、不正アクセス、ダークウェブ関連犯罪など。
- 科学捜査技術: デジタル・フォレンジック(PCやスマホのデータ解析)、DNA鑑定など最新の鑑識技術。
- 組織犯罪対策: 国際的なコールセンター詐欺グループや薬物密売組織への対策。
- 防犯システム: AIを活用した犯罪予測など、犯罪を未然に防ぐための先進的な取り組み。
AI犯罪予測からデジタル証拠解析まで
CIB代表団は大阪府警本部で、具体的な捜査手法について協議しました。
- AI捜査支援: 大阪府警が導入する、AIによる防犯カメラの自動追跡システムや「予測的警備」について説明を受けました。
- デジタル証拠解析: 消去されたデータ復元など、最新のデジタル・フォレンジック技術を視察しました。
- 捜査協力の強化: タイ警察からは、タイ国内で発生している特殊詐欺や日本人旅行者が被害に遭う事件に対し、より迅速な情報共有と捜査協力を要請しました。
今後の見通し
今回の訪問を契機に、両国の警察機関は捜査員の相互派遣や研修、犯罪情報のリアルタイム共有を推進することで一致。特に国境を越えるサイバー犯罪の撲滅に向けて、共同での捜査体制を強化していく方針です。
まとめ
統計データを見ると、両国の治安状況には明確な違いがあります。人口10万人あたりの殺人事件発生率は、日本が世界で最も低い水準(約0.2件)であるのに対し、タイは約2.6件と10倍以上の差があります。これはタイにおける銃器や薬物の蔓延が背景にあるとされ、凶悪犯罪のリスクはタイの方が高いと言えます。
一方で、「犯罪の質」に目を向けると、日本の課題も見えてきます。日本の犯罪検挙率は約38%ですが、近年は巧妙化する特殊詐-欺(コールセンター型詐欺など)やサイバー犯罪が増加しており、その捜査にはAI活用やデジタル・フォレンジックといった先進技術が不可欠です。
今回の連携強化は、こうした互いの事情を補い合うものです。タイ警察は日本の先進的な科学捜査・サイバー犯罪対策のノウハウを学び、自国の捜査能力と業務効率の向上を目指します。同時に、日本の警察にとっては、タイを拠点に日本人を狙う詐欺グループなどの国際組織犯罪を現地で摘発してもらうための重要な協力関係となります。今回の訪問は、国境を越える現代の犯罪に立ち向かうための、両国にとって必然的な一歩と言えるでしょう。
この記事を書いた人
- タイムラインバンコク編集部
バンコクに在住する経験豊富な編集者とライターからなる専門チームです。日本人メンバーだけでなく、日本語能力試験N1を持つタイ人メンバーも在籍しており、多様な視点から情報を捉えることを大切にしています。 インターネット上の情報だけでなく、実際に現地へ足を運び、独自の取材・調査を行うことを信条としています。グルメ、ビューティー、最新ニュースからカルチャーまで、バンコクで暮らす人、訪れる人にとって本当に価値のある、正確で信頼できる情報を厳選してお届けします。
出典
今回の警察間連携に関する報道
MGR Online
犯罪統計データに関する参照元
世界銀行 / UNODC等の国際機関が公表する統計データ

