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タイと日本が出国税値上げへ。旅行者への影響と世界の主な出国税と仕組みを解説

空港のチェックインカウンターでパスポートと航空券を見つめる日本人女性と、「タイと日本が出国税値上げへ」という文字が重なったサムネイル画像。
Thaim Line Bangkok

タイ空港公社(AOT)が国際線の空港税を大幅に引き上げる方針を固めました。一方、日本でも「出国税」の値上げが議論されています。

海外旅行の費用が、また少し高くなりそうですが、今回は、日タイ双方で進む「出国税・空港税」の値上げ詳細と、それが私たちの財布にどう影響するのか、そして世界のトレンドについて解説します。

① タイの出国税(空港税)について

タイの主要6空港(スワンナプーム、ドンムアンなど)で、国際線出発時にかかる「旅客サービス料(PSC)」、いわゆる空港税の大幅な引き上げが承認されました。

  • 変更内容:
    現行 730バーツ → 新料金 1,120バーツ(約53%値上げ)
  • 対象空港:
    スワンナプーム、ドンムアン、プーケット、チェンマイ、ハジャイ、チェンライ
  • 実施時期:
    2026年初頭(予定)

値上げの理由:
空港内のシステム(自動チェックイン機や生体認証など)の維持費や、ターミナル拡張工事などの設備投資を回収するためとしています。以前検討されていた「観光入国税(300バーツ)」が見送られた代わりに、空港利用者から徴収する形にシフトしたとも見られています。

② 日本の出国税の最新情報

実は、日本を出る時にも私たちは税金を払っています。「国際観光旅客税(通称:出国税)」です。

  • 現在の金額:
    1回につき 1,000円(大人・子供同額)
  • 最新の動き(値上げ検討):
    現在、日本政府内でもオーバーツーリズム対策の財源として、この出国税を「3,000円程度」に引き上げる案が浮上しています。2026年度以降の導入を目指して議論が進んでいます。ビジネスはさらに値上げ案も

③ 出国税とは?2重で支払う必要があるのか?

結論から言うと、出国税は「行きも帰りも両方支払う」ことになります。

もし2026年に両国の値上げが実施された場合、日タイ往復にかかる「税金コスト(燃油別)」は以下のようになります。

行程 現在(2025年) 2026年以降(予定)
日本出国時 1,000円 3,000円(案)
タイ出国時 730B(約3,540円) 1,120B(約5,430円)
合計負担額 約4,540円 約8,430円
※1バーツ=4.85円換算。航空券代や燃油サーチャージとは「別」にかかるコストです。

航空運賃が比較的安いLCCなどを利用する層にとっては、税金の占める割合が高くなり、飛行機代金が高くなったと感じる場合が多いかもしれません。

④ 世界の主な出国税制度と金額

「また値上げか…」と思われるかもしれませんが、実はこれ、世界的なトレンドでもあります。

多くの国が空港インフラの維持や環境対策のために、同様の税金や手数料を徴収しています。以下は主な国の例です。

国・地域 金額目安(日本円) 備考
イギリス 約17,000円〜 APD。距離により変動。世界最高水準。
オーストラリア 約6,900円 PMC。一律徴収。
シンガポール 約7,400円 空港使用料+開発税など。アジア最高水準。
タイ(新料金) 約5,430円 1,120バーツ(2026年〜予定)。
カンボジア 約4,500円 国際線一律30ドル。
日本(現状) 1,000円 国際観光旅客税。世界的に見るとまだ安め。
※レートや税制の詳細は変動します。あくまで目安としてご覧ください。

実は東南アジアの各国もすでに同じような制度を導入済

タイだけでなく、周辺国でも出国時にお金がかかるのは一般的です。

  • マレーシア:2019年から「出国税(Departure Levy)」を導入。日本行きなどの長距離便・エコノミー以外のクラスでは高額(約5,000円〜)になります。
  • インドネシア(バリ島):2024年から「観光税(約1,500円)」を導入。入国時に支払う必要があります。
  • ベトナム・フィリピン:航空券代に含まれる形で空港使用料等が徴収されており、実質2,000〜4,000円程度かかっています。

こうして見ると、日本の1,000円は世界的に見てかなり安く、タイの新料金もオーストラリアやシンガポールなどの「国際標準」に近づこうとする動きであることが分かります。

まとめ

日本とタイだけでなく、世界各国が「出国税」の値上げに向かっているのは確実な情勢です。今回の記事を制作するにあたり調べてみると、これは特定の国だけの話ではなく、世界中が「移動のコスト」を見直している流れを感じました。2026年以降に旅行を計画する際は、航空券の額面だけでなく、こうした「見えないコスト」も予算に組み込んでおく必要がありそうです。

これは「安く海外に行ける時代」の終わりを意味するのかもしれません。特にLCCのチケットが片道1万円台で買えたとしても、諸税を含めると結局2〜3万円になってしまう実情と国内のお金を外部に流出させず内需に回したい各国政府の思惑があります。今まで安すぎた日本と世界水準に向かうタイ。そして安い国への旅行を好む消費者とのバランスがこれからのインバウンドの獲得のカギかもしれません。

この記事の出典

本記事は以下の現地報道および公式発表を基に作成しました。

  • Bangkok One: Airport Tax Increase
  • Thai Examiner
  • 日本国税庁 / 観光庁資料

この記事を書いた人

keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
タイムラインバンコク編集部
Facebook(keita satou)

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タイムラインバンコク編集部は、バンコクに在住する経験豊富な編集者とライターからなる専門チームです。日本人メンバーだけでなく、日本語能力試験N1を持つタイ人メンバーも在籍しており、多様な視点から情報を捉えることを大切にしています。 インターネット上の情報だけでなく、実際に現地へ足を運び、独自の取材・調査を行うことを信条としています。グルメ、ビューティー、最新ニュースからカルチャーまで、バンコクで暮らす人、訪れる人にとって本当に価値のある、正確で信頼できる情報を厳選してお届けします。日本のメディアに情報提供することもあります。
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