タイ外貨準備高が初の3,000億ドル突破 バーツ高抑制へ大規模介入と中銀が発言
タイの外貨準備高が史上初めて3,000億ドル(約47兆円)の大台を突破しました。
これは、急激に進む「バーツ高」を食い止めるため、タイ中央銀行(BOT)がなりふり構わぬ防衛策に出ていることを示しています。
今回は、この巨額の外貨準備高が積み上がった「金額的規模」、その「要因」、そして中銀が打ち出した新たな「対策」について、順序立てて解説します。
1. 金額:史上初の3,000億ドル突破
現地報道およびタイ中央銀行のデータによると、2025年12月中旬時点でタイの外貨準備高は以下の水準に達しました。
外貨準備高の規模
3,019億ドル
(日本円換算:約47兆9,564億円 ※1ドル=156円)
この金額は、タイのGDP(国内総生産)の約1年分に相当する規模であり、新興国としては極めて厚い「経済の防波堤」を築いていると言えます。
2. 要因:なぜここまで積み上がったのか?
外貨準備高が急増した背景には、主に2つの要因があります。
① 中銀による「大規模介入」
今年、タイバーツは対ドルで10.3%も上昇し、アジアで2番目に強い通貨となりました。
急激すぎるバーツ高は輸出や観光に悪影響を与えるため、タイ中央銀行(BOT)は市場で「ドルを買って、バーツを売る」為替介入を断続的に実施しています。
ビタイ・ラタナコーン総裁も「バーツの変動を抑えるため、大規模な(large-scale)介入を行っている」と異例の明言をしています。買い入れたドルがそのまま外貨準備として積み上がった形です。
② 金(ゴールド)価格の高騰
もう一つの要因は、世界的な金価格の上昇です。
金価格は年初来で+70%近く高騰しており、タイ中銀が資産として保有している金のドル評価額が大きく膨らみました。
3. 対策:中銀が打ち出す「次なる一手」
介入だけでは限界があるため、BOTは12月26日、さらなる規制強化を発表しました。
- 20万ドル超の取引監視:
商業銀行に対し、20万ドル(約3,120万円)以上の外貨取引について、目的と書類の提出を義務付けました。これにより投機的な資金流入(ホットマネー)を監視します。 - 金取引アプリへの規制強化:
一時、金関連のFX取引が市場全体の20〜60%を占めるなど、バーツ高の主因となっていました。こうした投機的な動きを厳しくチェックする方針です。
副作用と在タイ邦人への影響
通貨防衛力は高まりましたが、実体経済への副作用も顕在化しています。
- 輸出・観光の減速: バーツ高により、外国人観光客数は前年比7%減と低迷。輸出企業の収益も目減りしています。
- 貿易赤字の拡大: 10月の貿易赤字は34.3億ドル(約5,350億円)と、2023年以来最大幅を記録しました。
在タイ日本人への影響は?
「円安・バーツ高」の傾向は、タイで生活する日本人や進出企業にとっても生活費の負担増に直結します。例えば、家賃5万バーツの物件は、以前より円換算で25万円以上の計算になっています。また日本からタイへの仕事の依頼や商品を購入する際に日本側が割高に感じるケースもあります。
2026年も「通貨の安定」と「経済競争力」の両立がタイ政府の最大の課題となりそうです。
2025年12月29日 10:00(現地時間) |著者: Keita Satou
この記事を書いた人
keita satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスの持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォロワー1700人)や複数のSNS(総フォロワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
著者のプロフィール
- ライター紹介:https://enjoy-bkk.com/about/
- Facebook:https://www.facebook.com/thaimlinebkk
出典・参考リンク
- The Nation Thailand
- Bloomberg
- Business Times

