スヌーカーは賭博?タイ首相『スポーツと認識』も賭博法改正は足踏み タイと日本の賭博への認識の違いについて
スヌーカーは世界的に人気のある技術系スポーツですが、タイでは今も「賭博法」の規制対象に含まれています。
2026年、この状態を変えようとする法改正案がタイ国会で審議されましたが、アヌティン首相が法案を認証せず、議論が足踏みしています。
今回は、スヌーカーがなぜ賭博扱いされているのか、タイの「賭博リスト」とは何か、そして日本との法律の違いや、旅行者・在住者が注意すべき点まで解説します。

スヌーカーはなぜ「賭博」扱いなのか
タイには、1935年(仏暦2478年)に制定された「賭博法」があります。この法律の末尾には、規制対象となる遊技を列挙した付表(リスト)があり、タイ内務省 地方行政局(DOPA)の解説によると、ビリヤードはこのリストの中に含まれています。
報道によると、スヌーカーはビリヤードに類似する競技として、同じ規制対象に含まれると整理されています。つまり「スヌーカー=違法賭博」という単純な話ではなく、「スヌーカーという競技自体が、91年前の賭博法の枠組みに入ったまま残っている」という制度上の問題です。
法改正の動きと「足踏み」の経緯
2026年4月、タイのスヌーカー界の関係者やプロ選手らが国会を訪れ、賭博法の改正を求めました。目的は、賭けを自由化することではなく、あくまで「競技としてのスヌーカーを賭博法の規制対象から外す」というものです。
報道によると、この改正案は政府の支出・収入に関わる「財政法案」に該当すると判断されたため、首相の認証が必要になりました。しかし2026年8月8日付の通知で、首相がこの法案を認証しない方針が伝えられ、スヌーカー界から疑問の声が上がりました。
これを受け、2026年9月18日、与党ブムジャイタイ党のワチャラポン議員が「賭博につながる活動が広がることへの懸念」から慎重な立場を取っていると説明しました。ただし、その数時間後の同日、アヌティン首相本人が「自分の感覚では、スヌーカーは賭博というよりスポーツとして認識している」と述べ、内務省に改めて確認する考えを示しています。
そのため、現時点で「タイ政府がスヌーカーの賭博指定解除を完全に拒否した」と断定するのは正確ではありません。法案の認証は一度保留された一方、首相自身は再確認する姿勢を示している、というのが正確な状況です。
タイの「賭博リスト」とは何か
タイの賭博法には、規制対象の遊技を列挙した「リストA(บัญชี ก.)」と「リストB(บัญชี ข.)」という2つの区分があります。
- リストA:原則として厳しく禁止される賭博
(バカラ、ルーレット、スロットマシン、オンラインカジノなど) - リストB:一定の条件・許可のもとで開催できる遊技
(競馬、闘鶏・闘牛、ビンゴ、宝くじ、麻雀、ビリヤード・スヌーカー、ダーツ、トランプなどのカードゲーム)
リストBに含まれているからといって、即座に違法というわけではありません。許可を受けていれば合法的に開催できる一方、無許可で行えば規制の対象になる、という位置づけです。スヌーカーが議論の対象になっているのは、このリストBに含まれているためです。
なお、資料によってはビリヤード・スヌーカーの項目番号が「23号」または「6号」と異なって紹介されている場合がありますが、これは現行法と検討中の改正案の違いによるものであり、矛盾ではありません。現行法での整理は「23号」です。
日本との法律の違い
タイと日本の一番の違いは、この一言に尽きます。
- タイ:遊技の行為自体・設備自体が、賭博法の規制対象になり得る
- 日本:遊技自体に違法性はなく、金銭を賭けた時点で初めて賭博行為として処罰対象になる
タイの賭博法には、日本にあるような少額免責の例外もなく、独立した「トランプ法」(未登録トランプ120枚超の所持で違法になり得る)も存在します。
日系バーでよく見かける遊具も、実はリストB掲載の遊技
日本人駐在員が集まるバーやカフェには、ダーツ・ビリヤード台・トランプが当たり前のように置かれています。しかし、これらは実はタイの賭博法「リストB」に具体的に名前が挙がっている遊技です。
- ビリヤード・スヌーカー:リストB第23号に該当(本記事のテーマ)
- ダーツ(ปาเป้า):リストBに列挙されており、内務省の通達により現在は原則として許可されない方針(各県の年次チャリティーイベントを除く)
- トランプ・カードゲーム(ไพ่ต่างๆ):リストB第21号に該当。特にタイのカードゲーム「ポックデーン」は日本の「カブ(おいちょかぶ)」に近い点数勝負のゲームで、原則として許可されていない
「日系バーにあるから安全」という考え方は、法律上は成り立たない点に注意が必要です。
許可を取得して遊技台や遊戯機を設置しているお店ももちろんあります。
タイで注意すること
タイで生活・旅行する日本人が特に注意したい点をまとめました。
- ゲームで勝敗に現金を賭けない
- バーやコンドミニアムでトランプを使う際も、金銭のやり取りは避ける
- 未登録トランプを大量に所持しない(自宅・コンドミニアムでも注意)
- ゴルフの「握り」など、少額でも金銭を賭ける行為は避ける
- コンドミニアムの一室で麻雀・ポーカーをする際は、チップの使用にも注意する
(点数計算のみでもチップ自体が賭博用具とみなされる場合がある) - オンラインカジノ・オンライン賭博には一切関わらない
- 「日本のルールでは合法だった」「日系バーに置いてあるから大丈夫」という考え方は、タイでは通用しない
タイの大手メディアおよび現地メディアの報道をもとにまとめています。
まとめ
タイでスヌーカーが「賭博扱い」とされているのは、91年前の賭博法にビリヤードとして規制対象に組み込まれ、それが現在まで残っているためです。2026年の法改正案は一度足踏みしたものの、首相自身が「スポーツと認識している」と述べており、今後の動向が注目されます。
タイと日本の違いを一言でいえば、「遊技自体が規制対象になり得るタイ」と「賭けた時点で処罰対象になる日本」です。ダーツやトランプのように、日系バーでも当たり前に置かれている遊具が実はリストBに載っている、という点は、多くの日本人にとって意外な事実ではないでしょうか。
タイに住んでいると、日本人駐在員同士のゴルフの「握り」やバーでのダーツ・トランプ勝負、コンドミニアムでの麻雀など、日本の感覚のまま行われがちな場面を見かけることがあります。今回のスヌーカーの議論を機に、タイの賭博法の考え方を改めて知っておくことは、無用なトラブルを避ける意味でも大切だと感じます。
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よくある質問(FAQ)
Q1. タイでスヌーカーをすること自体が違法なのですか?
いいえ、スヌーカーというスポーツ自体が違法なわけではありません。問題になるのは、施設の運営許可や、勝敗に金銭を賭ける行為です。競技としてプレーすること自体は、日常的に広く行われています。
Q2. 首相はスヌーカーの賭博指定解除を拒否したのですか?
2026年8月に法案の認証は保留されましたが、同年9月18日にアヌティン首相本人が「スポーツと認識している」と述べ、改めて確認する考えを示しています。「完全に拒否した」と断定するのは正確ではありません。
Q3. 日系バーにあるダーツやトランプも危険なのですか?
ダーツ・トランプはタイの賭博法「リストB」に列挙されている遊技です。純粋に遊ぶこと自体が即座に犯罪になるわけではありませんが、金銭を賭けたり、店が賭博目的で無許可営業をしていると判断されたりすれば規制の対象になります。
Q4. 日本では少額の賭けは処罰されないと聞きましたが、タイでも同じですか?
いいえ、異なります。日本の刑法には「一時の娯楽に供する物」を賭けた場合の例外規定がありますが、タイの賭博法にはこのような少額免責の規定がありません。
Q5. コンドミニアムで友人とトランプゲームをするのも危険ですか?
金銭を賭けなければ直ちに違法となるわけではありませんが、未登録トランプの大量所持や、チップを使ったゲームは近隣住民の通報につながる事例が報告されています。念のため注意が必要です。
出典・参考サイト
- The Thaiger(タイ語版)スヌーカー賭博リスト問題に関する報道(2026年9月18日)
- タイ国会 観光・スポーツ委員会 資料
- タイ内務省 地方行政局(DOPA)法令解説資料
- We News(法案認証見送りに関する報道)
著者プロフィール

Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
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