タイの金取引業者 バーツ高抑制のためドル建て取引を導入へ
2026年1月、タイの金(ゴールド)市場が大きく変わります。
国内の大手金取引業者14社が、オンライン取引システムを従来の「バーツ建て」から「米ドル建て」に移行すると一斉に表明。
大手14社が「ドル建て」へ移行
タイ金取引業者協会に加盟する大手14社(MTS Gold Groupなど)は、今後3〜6ヶ月以内にオンライン取引プラットフォームをアップグレードし、米ドル建てでの取引を本格導入します。
要点
- 市場シェア90%を占める大手14社(民間)
- 金の売買決済を「バーツ」から「米ドル」へ変更(課税回避)
- 金取引による為替変動(バーツ高圧力)の遮断(タイ中央銀行主導)
実際は「民間主導」の裏にある政府の圧力
今回の決定は、形式上はMTS Gold会長らが主導する「民間企業の自主的な取り組み」とされています。しかし実態は、タイ中央銀行(BOT)によるバーツ高の抑制政策です。
(参考:2025年から続くバーツ高と為替規制の背景はこちら)
政府は以前から、バーツ高の主因となっている金取引に対して「懲罰的な課税(特別事業税など)」をちらつかせていました。
業界側にとって、今回のドル建て移行は以下のような「防衛策」としての意味合いが強いのです。
- 増税回避: バーツ建て取引への課税強化を避けるため、ドル建てに避難する。
- 規制回避: 取引量の上限規制などを課されるリスクを未然に防ぐ。
なぜ「租税回避」と見なされないのか?
ここで一つの疑問が浮かびます。「課税を逃れるためにドル建てにするなら、それは『租税回避(Tax Avoidance)』として政府に怒られるのではないか?」と。
結論から言うと、政府はこれを「租税回避」とは見なしていません。むしろ、政府自身が望んでいる「政策的トレードオフ」なのです。
1. 税収よりも「為替安定」が国益
政府にとって、金取引から得られる数十億バーツの税収よりも、バーツ高によって輸出産業や観光業が被る「数千億バーツの損失」を防ぐ方が遥かに重要です。
あえて課税せず、ドル建て取引を認めることで、バーツ高圧力を緩和できるなら「安いコスト」だと判断しています。
2. 資金は「透明な口座」にある
ドル建てといっても、海外の隠し口座を使うわけではありません。タイ国内の銀行にある「外貨預金口座(FCD)」を使用します。
これにより、中央銀行は誰がどれだけドルを持っているかを完全に監視(モニタリング)できるため、マネーロンダリングの温床にはなりません。
3. 地下経済化の防止
もし無理に課税すれば、金取引はアンダーグラウンド(闇市場)に潜ってしまうでしょう。
政府としては、「ドル建てでもいいから、銀行システムを通した透明な取引」を続けさせた方が、経済統制の観点からも得策なのです。
今回の動きは、政府が「ドル建てでの取引を認める(=バーツへの両替を強制しない)」というアメを与えることで、「バーツ高是正」という成果を得ようとする、高度な通貨安定策と定義できます。
まとめ:2026年、タイ経済は安定するか
母と姉がタイ旅行に来た際に、少額ですがゴールドの購入をすすめた経験があります。その際には母は見栄えの良いダイアモンドのネックレスを購入し姉はゴールドのネックレスを購入しました。現在の売却価格は、ダイアモンドのアクセサリーは購入価格の1/3でゴールドのネックレスは購入時の2倍以上の価格がついています。商品の本質的な価値とは何か?というのを深く考えさせられます。
金取引がドル建てに移行することで、金相場の変動がダイレクトにバーツ相場を揺さぶる構造は解消へ向かいます。
これは輸出業者や観光業にとっては朗報であり、タイ経済全体にとっても「正常化」への大きな一歩と言えるでしょう。
2026年1月9日 11:50(現地時間) |著者: Keita Satou
この記事を書いた人

情報提供:keita satou
(タイ在住10年以上)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスの持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォロワー1700人)や複数のSNS(総フォロワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
著者プロフィール
- ライター紹介:https://enjoy-bkk.com/about/
- Facebook:https://www.facebook.com/thaimlinebkk
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