日本の競馬×ゲーム×アニメ×コスプレ「ウマ娘」がタイで人気爆発

2025年は、タイのゲーム・ポップカルチャーシーンにおいて、日本のコンテンツ「ウマ娘 プリティーダービー」が社会現象とも言えるほどの爆発的な人気を獲得した「黄金の年」として記憶されるでしょう。
単なるゲームのヒットに留まらず、日本の「競馬」「ゲーム」「アニメ」「コスプレ」という複数の文化がタイの現実の競馬文化と奇跡的な融合を果たし、タイの大手メディア「デイリーニュース(Dailynews)」が特集記事を組むほどの事態となりました。
この記事では、タイで「ウマ娘」が人気爆発するまでの2025年の軌跡を、報道に基づき時系列で振り返ります。
黎明期(~2023年):知る人ぞ知る存在
「ウマ娘」とは、かつて実在した競走馬の名と魂を受け継いだ、尻尾と耳を持つ美少女キャラクターです。育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』を主軸としたメディアミックスコンテンツで、プレイヤー(トレーナー)が彼女たちを育成し、レースでの勝利を目指します。
2021年2月に『ウマ娘 プリティーダービー』が日本でリリースされた当初、タイ国内ではサービスが提供されておらず、アクセスも困難でした。タイ語版のアニメや漫画が2023年頃から展開され始めましたが、知名度はまだ低く、日本語が理解できるか、VPNなどを利用して「サーバーにダイブ」する一部の熱心なコアファンだけが知るコンテンツでした。
転機(2024年):タイゲームショウとファンの熱意
最初の大きな転機は、2024年にCygamesが「タイゲームショウ2024」に初めてブースを出展したことです。この時、『ウマ娘 プリティーダービー パーティーダッシュ』などが展示されました。
当日、ブースにはタイの熱心なファンがウマ娘のコスプレ姿で集結。その熱意はメーカー側にも伝わり、「タイ市場には確かな需要がある」ことを強く印象付ける出来事となりました。
拡大期(2025年6月):グローバル版リリース
そして2025年6月、Cygamesは『ウマ娘 プリティーダービー』のグローバル版(タイ語対応)をモバイル・PC向けに正式にリリース。これにより、タイの一般プレイヤーが爆発的に増加しました。
プレイヤーが増えるにつれ、SNS上では「ウマ娘ごっこ」「ウマ娘中毒」といったスラングが流行。多くの人々がコンテンツの奥深さに魅了され、ファンコミュニティが急速に形成されていきました。
爆発(2025年8月):競馬場での「奇跡」
2025年のタイにおける「ウマ娘」現象を決定づけたのが、ファン主導で実現した競馬場でのイベントです。
ウマ娘コミュニティの代表格である「ガイド・ドゥ(Guide Do)氏」が、ゲームへの愛を広めるため、友人たちと「本物の競馬」を観戦する企画を発案。彼はダメ元で、バンコクの歴史ある競馬場「ロイヤルバンコクスポーツクラブ(RBSC)」に対し、「ウマ娘のコスプレをして観戦に入場してもよいか?」と問い合わせました。
驚くべきことに、RBSCの競馬部門はこれを「許可」します。
この情報がSNSで共有されると、当初少人数だった企画は瞬く間に拡大。2025年8月3日、競馬場には数百人規模のウマ娘ゲーマーやコスプレイヤーが集結しました。さらにRBSCは、一部のコスプレイヤーに競馬場のトラック内への立ち入りや写真撮影、そして実際にトラックを「走る」ことまで許可。世界中の誰も想像しなかった光景が繰り広げられました。
この「現実の競馬場でウマ娘が走る」という衝撃的な光景の写真はSNSで世界的に拡散され、タイ国内外で大きな話題となりました。
発展(2025年9月):公式「コスプレレーシング」開催
このファンの熱意とRBSCの柔軟な対応は、さらなる展開を生みます。8月のイベントの成功を受け、今度はRBSCが公式主催となり、2025年9月14日に「コスプレレーシング(コスプレランニング大会)」を開催しました。
当日は、タイのアイドルグループ「HAPPYTAIL」が出演してゲーム内の「ウイニングライブ」を模したステージイベントが行われるなど、ファン文化とタイの伝統的な競馬文化が見事に融合。このタイ独自のムーブメントは、他のアジア諸国のファンダムにも大きな影響を与え始めています。
認定(2025年10月):最優秀モバイルゲーム賞 受賞
この一連の社会現象的な盛り上がりが最高潮に達したのが、2025年10月に開催された「Thailand Game Awards 2025」です。『ウマ娘 プリティーダービー』は、並み居る競合を抑え、「最優秀モバイルゲーム賞」を受賞しました。
これは、ゲーム自体のクオリティはもとより、ファンが主体となって巻き起こした熱狂的なムーブメント全体が公式に認められた瞬間でもありました。
まとめ:ファンが創った「黄金の年」
タイの競馬自体は世界的に有名ではない上に、日本の過去の競走馬の実名を擬人化したゲームがタイで大ヒットするなど、だれが予想できたでしょうか?まさに日本のアニメコンテンツの強さとコスプレとゲームという新時代のトレンドなのかもしれません。
Dailynewsなどのタイメディアは、2025年の「ウマ娘」現象を、単なるゲームのヒットとしてではなく、「ファンコミュニティの情熱」が、「Cygamesの公式展開(グローバル版)」と「タイ競馬界(RBSC)の異例の柔軟性」と奇跡的に融合し、タイ独自の新しいカルチャーを生み出した稀有な成功例として高く評価しています。
Cygamesも、当初は非公式だったこれらのファンの動きを把握・容認し、現在では公式に支援する姿勢を見せています。2025年12月7日には、さらなる「ウマ娘コミュニティイベント」も予定されており、ファンが作り上げたこの熱狂は、タイの競馬とポップカルチャーの両方を巻き込みながら、さらに発展していきそうです。
出典・参考サイト
- Dailynews (2025/10/28)
- Excite NEWS (タイ発信版)
- AsiaClick (Thailand Game Show 2025 レポート)
- No Kid, No Game (アジア圏ゲーム文化ブログ)
- Thisisgame Thailand (タイ語)
- mustplay.in.th (タイ語)
- Facebook:https://www.facebook.com/groups/3362565817183338
この記事を書いた人
keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
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