国民的アイテム ヤードムが20万本リコール!微生物汚染 違法製造拠点で230万点押収

タイの「ヤードム(ยาดม)」は、メンソールなどの清涼感ある香りを嗅ぐためのハーバル吸入剤で、タイ国民の日常に欠かせない「国民的アイテム」です。
その中でも、お土産として絶大な人気を誇り、BLACKPINKのリサ氏やクリス・ヘムズワース氏など、世界のセレブリティも愛用していることで知られる有名ブランド「Hong Thai(ホンタイ)」(緑色のパッケージでお馴染み)に関して、非常に衝撃的なニュースが飛び込んできました。
タイ主要メディアは2025年10月30日、この「Hong Thai」ブランドのヤードムが、深刻な微生物汚染により大規模リコール対象となり、さらに警察が違法な製造拠点を摘発したと報じました。
【速報】「Hong Thai」20万本リコール(微生物汚染)
タイ食品医薬品局(FDA)は、「Hong Thai」ブランドのハーバル吸入剤(Formula 2)の一部ロットから基準値を超える微生物が検出されたとして、製造元に対し20万本の製品リコールを命じました。
- リコール対象製品: Hong Thai Inhaler (Formula 2)
- 対象製品番号: G 308/62
- 対象ロット番号: Lot 332
- 製造日: 2024年12月

FDAは、汚染された製品を使用すると呼吸器系などに健康被害が出る可能性があるとして、消費者に対し、直ちに手持ちの製品のロット番号を確認するよう強く呼びかけています。
微生物汚染とは、製品や食品などに人間の健康に悪影響を及ぼし得る微生物(バクテリア・カビ・酵母・ウイルス等)が混入・繁殖している状態を指します。
一般的な微生物汚染の内容
- バクテリア(細菌):大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌などが含まれる
- カビや酵母:発酵異常や異臭・色変化
- ウイルス:食品由来の感染症原因となる場合も
「Hong Thai」の吸入剤では、公的検査で安全基準を超えるレベルのバクテリア等微生物が検出されたため、健康リスクを考えリコール(回収)と告知されました。
発覚の経緯:警察による違法製造拠点の摘発

今回のリコールは、タイ警察の消費者保護犯罪取締局(CPPD)とFDAが、バンコクおよびサムットサコン県にある4カ所の無許可・違法製造拠点を家宅捜索したことによって発覚しました。
これらの違法拠点からは、偽造された「Hong Thai」ブランドの製品や製造機器など、総計230万点以上が押収され、その推定価値は1億バーツ(約3.1億円)に上ると報じられています。
製造違反には、最大2年の禁固刑および最大20万バーツの罰金が科される可能性があります。
「現在、当該ロットが正規ブランドの製造ミスによるものか、それとも違法なコピー/並行流通品によるものか、当局が調査中です。現時点で判明しているのは、正規ブランドの登録ロット(Lot 000332)が微生物基準超過によりリコール対象となったという点です。また、消費者レビュー等では類似品・偽物の流通も指摘されており、購入時には正規品かどうかの確認が強く推奨されます。」
汚染の深刻な原因:「需要過多」と「衛生管理不足」
当局の調査に対し、違法拠点の関係者は「『Hong Thai』ブランドは人気がありすぎて注文に正規工場の生産が追いつかないため、無許可の拠点で並行して生産していた」と供述しています。
これらの違法工場では、当然ながら正規の品質管理基準や衛生管理が徹底されていませんでした。FDAによると、製造ラインや容器の洗浄不足、不衛生な作業環境(雑菌やカビの侵入)、検査の不徹底などが原因で、製品が基準値を超える微生物に汚染されたと見られています。
メーカー(Hong Thai社)と当局の対応
- メーカー対応:
正規の「Hong Thai」社は、今回の事態を重く受け止め、リコール対象製品(Lot 332)の全額返金・交換に応じると発表。「問題発生時は100%責任を取る」と表明し、再発防止策として新工場を建設し、機械・管理体制を全面的に刷新すると約束しています。 - 当局対応:
FDAは、汚染製品による健康被害への注意喚起を続けると同時に、違法製造拠点に対する刑事責任の追及を進めています。
社会的反響とブランドへの影響
「Hong Thai」のヤードムは、タイ国内だけでなく、BLACKPINKのリサ氏、クリス・ヘムズワース氏、さらにはパリ五輪のタイ選手団なども愛用していることが報じられており、国際的にも知名度が高いブランドでした。そのため、今回の違法製造とリコール事件は、タイの健康補助剤業界全体の品質管理体制やライセンス保持のあり方に対しても、厳しい目を向けさせる事態となっています。
消費者・旅行者へのアドバイス
タイ在住者および旅行者の方は、以下の点にご注意ください。
- ロット番号の確認:
まず、お手持ちの「Hong Thai」のヤードム(Formula 2)が、リコール対象の「Lot 332」(製品番号 G 308/62)でないか、必ず確認してください。 - 正規販売店での購入:
今後ヤードムを購入する際は、市場や露店での安すぎる製品を避け、信頼できる薬局、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、または「Pao Tang」アプリを通じた販売など、正規流通経路や公式販売店舗での購入を強く推奨します。 - 疑わしい場合:
もし製品に異常を感じたり、対象ロットであるか不明な場合は、直ちに使用を中止し、メーカーの窓口やFDAの公式発表を参照・照会してください。
まとめ
タイの国民的アイテムであり、世界的な人気を誇る「Hong Thai」ブランドで発覚した今回のリコール事件。その背景には、人気に便乗した無許可の「違法生産」と、深刻な「衛生管理の欠如」がありました。
正規メーカーは迅速な返金・交換対応と再発防止を約束していますが、消費者としては、お土産として大量購入する際なども、信頼できる正規販売店を選ぶという自衛策が求められます。
出典・参考サイト
- Khaosod English (2025/10/30)
- Sanook News (2025/10/30)
- タイ食品医薬品局 (FDA)
- タイ国家統計局 (NSSO) (2024年 飲酒・喫煙統計)
この記事を書いた人
keita satou(タイムラインバンコク編集部)
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォワー1700人)や複数のSNS(総フォワー7万人以上)を運営する。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
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