「致死率40%」のハンタウイルス、タイへの影響は? 政府が検疫を緊急強化

タイの大手メディアおよび現地メディアの報道をもとにまとめています。
報道によると、タイ政府は2026年5月、世界保健機関(WHO)が南大西洋のクルーズ船でのハンタウイルス感染を報告したことを受け、国内の監視体制を強化し、国際検疫所でのスクリーニング徹底を正式に指示した。
現時点でタイ国内での感染例・流行は確認されておらず、一般市民へのリスクは「極めて低い」と評価されている。しかしタイ政府は先制的な予防措置として対応を進めており、在住日本人・旅行者も基本的な知識と予防策を把握しておくことが望ましい。

旅行者・在住者が知っておきたい予防策をわかりやすく整理。
ハンタウイルスとは
ハンタウイルス(Hantavirus)は、主に野ネズミ・家ネズミなどのげっ歯類を自然宿主とするウイルスの総称だ。人に感染すると重篤な呼吸器疾患や腎不全を引き起こす恐れのある「人獣共通感染症(ズーノーシス)」として、WHOや各国衛生機関が監視を続けている。
新しいウイルスではなく、世界各地で以前から確認されているが、発症すると重症化しやすく、現時点で特効薬もワクチンも存在しない点が警戒される理由だ。
タイトルの「致死率40%」について
ハンタウイルスが引き起こす病気には大きく2つの型がある。致死率はその型によって大きく異なる。
病型:主な発生地域:致死率
- ハンタウイルス肺症候群(HPS)
南北アメリカ大陸:約30〜40%(最大約50%) - 腎症候性出血熱(HFRS)
アジア・欧州(中国・韓国など):約1〜15%
⚠️ タイトルの「致死率40%」はHPS型(主に南北アメリカ大陸)の数字です。タイを含むアジアで主に報告されるHFRS型の致死率は約1〜15%と異なります。ウイルスの危険性を正しく理解するためにご確認ください。
どうやって感染するのか
感染の主なルートは「吸入感染」だ。ウイルスを保有するネズミの尿・糞・唾液が乾燥して粉塵となり、それを吸い込むことで感染する。換気の悪い倉庫・物置・長く閉め切った部屋などでの作業中が最もリスクが高い。
- 空気・吸入感染(主な感染経路):ネズミの排泄物が乾燥し粉塵化したものを吸い込む。換気の悪い密閉空間でのリスクが最大。
- 直接接触・経口感染:排泄物に触れた手で口・目をこする、汚染された食物を摂取する、ネズミに直接噛まれるなど。
- 人から人への感染:極めて稀。南米で確認される一部の株(アンデスウイルスなど)を除き、通常は人から人へは感染しない。
コロナやインフルエンザのように飛沫で街中に広がるタイプのウイルスではない点は、まず押さえておきたい。
症状と進行
感染後、通常1〜5週間(平均2〜4週間程度)の潜伏期間を経て発症する。初期症状は風邪・インフルエンザに酷似しており、見分けが難しい点が厄介だ。
- 高熱・悪寒
- 強いだるさ(倦怠感)
- 筋肉痛(特に太もも・背中・肩)
- 頭痛
- 吐き気・腹痛・下痢
重症化すると、HPS型では急激な呼吸困難・肺水腫へ、HFRS型では腎不全・出血傾向へと進行する。いずれも早期の医療機関受診が救命率を大きく左右する。
治療とワクチンの現状
現時点でハンタウイルスに対する特効薬(抗ウイルス薬)は確立していない。治療は酸素投与・人工呼吸器管理・血圧管理・人工透析などの対症療法が基本となる。早期に医療機関を受診し、適切なサポートを受けることが救命率を左右する。
ワクチンについては、中国・韓国などでHFRS用の不活化ワクチンが一部承認・使用されている例はあるが、世界的に広く流通する一般向けの確立したワクチンは存在しない。
タイ政府の対応(2026年5月時点)
報道によると、タイ政府のラリダー・ペリットウィワッタナー首相府副報道官は、WHOのクルーズ船感染報告を受け、以下の対策を正式に発表した。
- 国際水際検疫の強化:航空会社・港湾と連携し、感染リスク地域からの入国者への健康チェックを厳格化。
- 医療機関へのスクリーニング指示:全国の病院に対し、発熱症状かつげっ歯類との接触歴がある患者への精査を要請。
- 「危険感染症」指定の検討開始:国家感染症委員会が、仏暦2558年(2015年)感染症法に基づく法的指定の妥当性評価を感染症管理局に指示。
- 検査体制の整備:報道によると、タイ政府科学局がBSL-3(バイオセーフティレベル3)ラボを整備し、疑い例への検査対応が可能な体制を確立済みとされている。
在タイ日本人・旅行者が今すぐできる予防策
最大の予防策は「ネズミおよびその排泄物との接触を避けること」に尽きる。バンコクの古い建物・倉庫・飲食店裏などはネズミが出やすい環境のため、以下の点を意識したい。
1. ネズミの住処・エサ場を作らない
食べ物・ペットフード・生ゴミを密閉容器で保管する。家やオフィスの隙間・穴をふさいでネズミの侵入経路を断つことが基本だ。
2. 密閉空間に入る前は必ず換気
倉庫・物置・長く使っていない部屋などに立ち入る前は、ドア・窓を開放して30分以上換気してから入る。
3. 掃除は「湿式清掃」が鉄則(最重要)
ネズミの糞尿がある場所を乾いたままほうきで掃いたり、掃除機で吸ったりしてはいけない。粉塵が舞い上がりウイルスを吸い込む原因になる。正しい手順は以下のとおりだ。
- マスク・使い捨て手袋を着用する
- 希釈した塩素系漂白剤(ハイター等)または消毒スプレーを糞尿に十分吹きかけて湿らせる
- ペーパータオル等で拭き取り、ビニール袋に密封して処分する
- 作業後は必ず手洗いを徹底する
まとめ:ウイルスは、正しい知識が最大の予防
2026年5月11日時点で、タイ国内でのハンタウイルス感染例は確認されていません。
もちろん特別な行動制限や渡航制限も出ていない。
ただし、致死率30〜40%という高い致死率と、一部の株では人から人への感染も報告されているという報道もあるため、早めの対応をしても過剰ということはない。
またタイでは日本ではなじみの薄いウイルスや病気もある。(デング熱や狂犬病など)お子様などは特に好奇心からいろいろな場所を触ったり、学校や屋外活動での感染リスクもあるためご注意いただきたい。
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よくある質問
Q. タイでハンタウイルスに感染するリスクはありますか?
A. 2026年5月11日時点で、タイ国内でのハンタウイルス感染例は確認されていません。タイ政府もリスクを「極めて低い」と評価しています。ただし、ネズミが出やすい古い建物や倉庫、換気の悪い密閉空間での作業時は基本的な予防策を心がけてください。
Q. ハンタウイルスは人から人にうつりますか?
A. 基本的にはうつりません。感染源はネズミなどのげっ歯類であり、乾燥した排泄物の粉塵を吸い込むことが主な感染経路です。南米の一部の株(アンデスウイルス)を除き、コロナやインフルエンザのように人から人へ広がるウイルスではありません。
Q. ハンタウイルスのワクチンや特効薬はありますか?
A. 現時点では、世界的に広く使われる一般向けのワクチンも特効薬(抗ウイルス薬)も確立していません。発症した場合は、人工呼吸器管理や人工透析などの対症療法が中心となります。早期受診が救命率を大きく左右します。
Q. ネズミの糞を見つけたらどう掃除すればよいですか?
A. 乾いたままほうきで掃いたり掃除機をかけたりするのは厳禁です。粉塵が舞い上がりウイルスを吸い込む危険があります。マスク・手袋を着用し、希釈した塩素系漂白剤(ハイター等)を十分に吹きかけて湿らせてから、ペーパータオルで拭き取りビニール袋に密封して処分してください。
Q. 「致死率40%」とはどういう意味ですか?タイでも同じリスクですか?
A. 致死率40%はハンタウイルス肺症候群(HPS)という主に南北アメリカ大陸で見られる病型の数字です。タイを含むアジア・欧州で主に報告される腎症候性出血熱(HFRS)型の致死率は約1〜15%と大きく異なります。タイでのリスクをそのまま「40%」と捉えるのは正確ではありません。
Q. タイ政府はどのような対策を取っていますか?
A. 報道によると、タイ政府は国際水際検疫の強化・全国の医療機関へのスクリーニング指示・「危険感染症」法的指定の妥当性評価の開始・BSL-3レベルの検査体制整備などを進めています。現時点での国内感染はゼロで、あくまで先制的な予防措置として対応が進められています。
出典・参考サイト
- タイ主要経済紙 Thansettakij(2026年5月10日配信・11日更新)
- タイ政府首相府副報道官発表(ラリダー・ペリットウィワッタナー氏)
- WHO ハンタウイルスファクトシート
著者プロフィール

Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,700人)をはじめ、複数のSNSで合計7万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
- ライター紹介:https://enjoy-bkk.com/about/
- Facebook:https://www.facebook.com/thaimlinebkk
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