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タイのコウモリから新型コロナ近縁ウイルス 東大・チュラ大の国際研究が明らかに

「タイのコウモリから新型コロナ近縁ウイルス 東大・チュラ大が発表」という日本語テキストと、コロナウイルスの3DCG画像およびタイの熱帯雨林の洞窟から飛び立つコウモリを組み合わせた縦型AI生成サムネイル。
keita satou

東京大学医科学研究所とタイ・チュラロンコン大学などの国際研究チームが、タイに生息するキクガシラコウモリから新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に近縁なコロナウイルス群を新たに確認しました。研究成果は2026年5月6日、米科学誌「Cell」のオンライン版で発表されています。

※本記事はタイの大手メディアおよび現地メディアの報道、ならびに東京大学医科学研究所の公式発表をもとにまとめています。

この記事のポイント

タイのコウモリから新型コロナ近縁ウイルス発見を解説するインフォグラフィック。東京大学医科学研究所とチュラロンコン大学の国際共同研究。SARS-CoV-2との遺伝子類似性約91.5%・調査概要・研究の意義・今後の展望を図解。出典:東京大学医科学研究所・チュラロンコン大学 共同発表(2026年5月)。
東大・チュラ大の国際研究によるタイのコウモリからの新型コロナ近縁ウイルス発見を解説したインフォグラフィック。出典:東京大学医科学研究所・チュラロンコン大学 共同発表(2026年5月)
  • タイ・チャチューンサオ県のコウモリから新型コロナに近縁なウイルス群を確認・Cell誌に掲載
  • 一部はヒトの細胞受容体(ACE2)に結合できる性質を持つことが判明
  • ただし増殖力・病原性は新型コロナより大幅に低く、現時点で人への流行は未確認
  • 現行の新型コロナワクチンや治療薬が有効であることも実験で確認
  • 将来のパンデミック対策に向けた「事前の備え」としての重要な基礎研究

1. どんなウイルスが見つかったのか

東京大学医科学研究所の佐藤佳教授が率いる国際研究コンソーシアム「G2P-Asia」は、タイ東部チャチューンサオ県の人工洞窟に生息するキクガシラコウモリ(Rhinolophus acuminatus)を調査。新型コロナウイルスに近縁なコロナウイルス群(SC2r-CoV)を複数確認しました。

研究チームはこれらを「Clade A」「Clade B」という2つの系統に分類しており、今回特に注目されているのはClade Bに属するウイルス群です。東大医科研の公式発表によると、代表的なウイルス「RacCS20637」が詳細な分析の対象となりました。

2. なぜニュースになっているのか

注目される理由は、このウイルスがヒトの細胞への「入口」となるACE2受容体に結合できる性質を持つと判明したためです。ACE2受容体は新型コロナウイルスがヒト細胞に侵入する際にも使う受容体で、東大医科研の発表によるとRacCS20637は実験上でヒトACE2に効率よく結合することが確認されました。

ただし重要なのは、「ヒト社会で感染が広がっている」という話ではない点です。これはあくまで研究室でウイルスの性質を調べた結果です。

3. 危険なのか? 病原性・増殖力は

東大医科研の公式発表によると、RacCS20637の特徴は以下の通りです。

  • ACE2への結合力:ヒトACE2に効率よく結合できる
  • 増殖能力:ヒト由来の鼻腔・気道・肺胞上皮細胞での増殖力は新型コロナより大幅に低く、鼻腔・気道上皮細胞では増殖が認められなかった
  • 細胞融合力:隣の細胞へ広がる力も新型コロナより低い
  • 動物実験(ハムスター):呼吸機能の低下や肺でのウイルス増殖は確認されず、病原性は非常に低いと評価

つまり「ヒトの細胞には”入れる”が、実際に重い肺炎などを引き起こす力はかなり弱いウイルス」という評価です。現時点で一般の人が過度に心配する必要はないと考えられています。

4. 現行のワクチン・治療薬は効くのか

東大医科研の発表では、COVID-19ワクチンを3回接種した人の血清を使った中和試験も実施されました。その結果、RacCS20637はSARS-CoV-2よりも中和されやすく、さらにレムデシビルやニルマトレルビルなど既存の抗ウイルス薬も有効性を示したとされています。

つまり仮に将来、似た系統のウイルスが問題になったとしても、既存の知見や薬が役立つ可能性があるという前向きな意味も含んでいます。

5. なぜタイのコウモリを調べるのか

新型コロナウイルスは、野生のキクガシラコウモリが持っていたウイルスが何らかの経路でヒトに感染しパンデミックを引き起こしたと考えられています。東南アジアはコウモリの多様性が非常に高く、未知のコロナウイルスが豊富に存在する地域です。

今回のゲノム解析では、これらのウイルスがコウモリの移動とともに中国・雲南やラオス北部からタイへとインドシナ半島を数千キロ単位で移動している可能性も示唆されました。移動の過程でウイルス同士が遺伝子を混ぜ合わせ(組換え)、多様性を高めている実態も浮き彫りになっています。

東大医科研の英語発表では、佐藤佳教授が「東南アジアの多様なウイルスの中に次のパンデミックのリスクが潜んでいる可能性がある」「リスクのあるウイルスを先に見つけて性質を把握することが備えの第一歩」とコメントしています。

6. タイ在住者・旅行者への注意点

今回の発表は、新たなパンデミックの発生を示すものではありません。ただし野生動物由来ウイルスへの一般的な注意として以下を心がけてください。また狂犬病の恐れもあります。

  • タイでは野生の動物や野良犬・野良猫に触らない
  • 体調不良時は早めに医療機関を受診する

こちらもご覧ください
狂犬病について解説 バンコクでも感染リスクのあるタイ 旅行者・在住者が知っておきたい情報。

まとめ

今回の研究は、「敵の正体をあらかじめリストアップし、既存の薬やワクチンが効くかどうかを事前に検証した」という点で、世界的な感染症対策の体制整備に向けた重要な一歩です。

すっかり過去の話になりつつあるコロナのパンデミック騒動ですが、研究者の方々の日々の努力によって未来のパンデミックを未然に防ぐ可能性があるというのは、本当に頭が下がる思いです。また本記事でも触れましたがタイでは狂犬病のリスクなどもありますので、野生の動物や野良犬や野良猫には絶対に安易に触らないように気を付けてください。

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著者プロフィール

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Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,700人)をはじめ、複数のSNSで合計7万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。

出典・参考サイト

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Keita Satou
タイ在住ライター
タイ在住ライター バンコク在住10年以上。旅行ライセンスの持つタイ法人の社員のかたわらライターも行う。タイ在住日本人向けのメディアとタイ人向けメディアを運営。Facebook(フォロワー1700人)や複数のSNS(総フォロワー7万人以上)を運営する。日本のテレビ・メディア取材経験多数あり。職業柄、各業界のタイの裏話を聞くことも多数あるそう。
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