「電気がないなら投票しない」30年放置されたターク県の村が選挙ボイコット
「電気がないなら投票しない」
30年放置されたターク県の村が選挙ボイコット
2026年2月に行われたタイ総選挙。バンコクではデジタル化や経済対策が争点となりましたが、北部の山岳地帯で「ある村の有権者全員が投票を棄権する」という前代未聞の事態が起こりました。
彼らの主張はシンプルかつ悲痛なもの。「電気が通らないなら、投票もしない」。
タイ大手メディアなどの報道を基に、このボイコットが浮き彫りにした「タイに残された5,000の暗闇」について解説します。
事件の概要:投票率0%の衝撃
舞台となったのは、ミャンマー国境に接するタイ北西部・ターク県ターソーンヤーン郡にある山岳集落「クン・フアイ・タック村(Ban Khun Huay Tak)」です。
2026年2月8日の総選挙当日、この村の有権者約1,140人は、示し合わせたように誰一人として投票所に向かいませんでした。

出典GoogleMap
「30年以上も電気を頼んでいるのに無視され続けてきた。選挙の時だけ票をもらいに来る政治家にはもううんざりだ」
出典:Thai PBS
なぜ30年も電気が通らないのか?
タイの電化率は統計上99%を超えています。なぜこの村だけが30年も取り残されているのでしょうか。その理由は「技術不足」ではなく「法律の壁」にあるそうです。
- 国立公園・保護区の壁:村が森林保護区の境界付近にあるため、森林法などの規制により、電力会社(PEA)が勝手に電柱を立てることができません。
- 行政の縦割り:「インフラを通したい地方自治体」と「自然を守る環境省」の間で板挟みになり、許可が下りない状態が続いていました。
住民はこれまでソーラーパネルや発電機で凌いできましたが、故障や燃料高騰により、子供たちは夜間の勉強もままならない状況だったといいます。
全国に広がる「5,000の暗闇」
このニュースが注目されたのは、これが氷山の一角だからです。
報道によると、同様の理由(国立公園内にある、土地の権利書がない等)で、電気や水道などの公共インフラが届いていないコミュニティは、タイ全国に約5,000か所も存在すると言われています。
また、電気の開通を申請しているものの、環境アセスメント(EIA)などの許可待ちで何年も待たされている世帯は、全国で2万世帯以上にのぼります。
まとめ
今回の「命がけのボイコット」は、結果として成功しました。メディアがこぞって報じたことで世論が沸騰し、内務省や環境省の幹部が慌てて現地入りし、特例措置による電化に向けた協議が始まったからです。
バンコクでは「AI政府」や「仮想通貨ハブ」といった華やかな言葉が飛び交っていますが、車で数時間走れば、明かりすらない村がある。
このコントラストこそが、2026年のタイのリアルです。過去には月収3000バーツ未満の人がいることも記事しましたが、「富の格差世界一」ともいわれるタイ。持つものと持たざる者の格差は日本人の考える想像以上なのかもしれません。今回の事件は、タイ社会の厳しい現実と、団結した市民の強さを同時に見せつけました。
この記事を書いた人

keita satou : バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,700人)をはじめ、複数のSNSで合計7万人以上のフォロワーを抱える。
- ライター紹介:https://enjoy-bkk.com/about/
- Facebook:https://www.facebook.com/thaimlinebkk
出典
- Thai PBS (2026/02/13)
- PEA (Provincial Electricity Authority) Reports
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