タイ各地で名義貸し会社を一斉調査 外国人の実質経営に厳格対応へ
タイ商務省ビジネス開発局(DBD)は、プーケット、パタヤ、サムイ島、パンガン島、ホアヒン、バンコクなど主要観光地や都市を中心に、タイ人名義を使って外国人が実質的に経営する「名義貸し会社(ノミニー)」の取り締まりを本格化させています。
報道によると、対象地域の登録会社88,236社のうち外国人株主が関与する会社は45,356社にのぼり、疑いのある企業を合計すると5万社超が重点調査の対象となっています。違反が確定した場合、外国人事業法に基づき最長3年の禁錮や最大100万バーツの罰金が科される可能性があります。
名義貸し(ノミニー)とは何か
タイでは、外国人が自由に参入できない、または制限される業種が法律で定められています。そのため一部では、タイ人に株主や取締役の名義を借りさせ、実質的には外国人が会社を支配する形が問題視されてきました。これが「名義貸し(ノミニー)」と呼ばれる手法です。
書類上はタイ人が51%以上の株式を保有するタイ企業に見せながら、実際の経営判断・資金・利益配分はすべて外国人が握るという構造で、外国人事業法(Foreign Business Act B.E.2542)に抵触する可能性があります。
調査の対象地域と規模
報道によると、DBDが確認した地域別の状況は以下のとおりです。
パタヤ周辺(バンラムン郡)
登録企業33,314社のうち、外国人株主が関与する企業は19,910社にのぼり、全体の約60%を占めます。観光地のなかで最も規模が大きく、重点調査エリアに指定されています。
プーケット
登録企業29,646社のうち、外国人株主が関与する企業は11,626社です。高級リゾート開発や不動産投資が盛んなエリアで、違法スキームが絡んでいると疑われるケースも確認されています。
サムイ島・パンガン島
サムイ島は登録企業12,050社のうち8,213社、パンガン島は3,754社のうち2,381社に外国人の関与が確認されています。2島を合わせると、登録企業全体の約68%に外国人が関与しており、調査の発端となったエリアです。
ホアヒン・クラビ・パンガー・パーイ
ホアヒンは4,061社中2,081社、クラビは3,587社中749社、パンガーは1,685社中346社、パーイは139社中50社に外国人株主の関与が確認されています。
当局が重視する「レッドフラッグ」
報道によると、DBDは書類上の株主比率だけでなく、実質的な支配の実態を示す以下のような「レッドフラッグ(危険信号)」を重点的にチェックしています。
- 同一のタイ人が数十〜数百社の株主・取締役に名前を連ねている不自然なケース
- 書類上はタイ人が過半数株主であるにもかかわらず、外国人のみが会社の署名権(サイン権)を持っているケース
- タイ人株主に、その株式を取得するだけの資金力・出資実態がないケース
- 実際の利益配分や資金の流れが外国人側に偏っているケース
これらの兆候が確認された場合、銀行口座・会計帳簿・取引実態まで踏み込んだ詳細監査が行われます。
水際対策と取り締まりの効果
タイ政府は2026年1月1日および4月1日から、会社設立時の審査を大幅に強化しています。報道によると、外国人が関与する会社については、タイ人株主が実際に出資したことを証明する銀行の資金移動履歴の提出が義務化され、証明できない場合は登記申請が即座に却下される運用が始まっています。
この措置により、名義貸し疑いのある高リスクな会社設立申請がすでに75%減少したと報じられています。また、パタヤでは外国人比率や取締役比率に関する法律を無視して運営していたツアー会社4社の営業ライセンスが即座に取り消され、閉鎖に追い込まれています。
違反した場合のペナルティ
報道によると、ノミニー行為が確定した場合、外国人だけでなく名義を貸したタイ人も同罪として刑事責任を問われます。
- 禁錮刑:最長3年
- 罰金:10万〜100万バーツ
- 裁判所命令に従わない場合は、違反が解消されるまで毎日1万〜5万バーツの追加罰金
- 会社の登記抹消・資産差押え・刑事告発
名義を貸したタイ人側の弁護士・会計士・一般市民も処罰対象となるため、タイ人パートナーにとってもリスクが大きい問題です。
なぜ今、取り締まりが強化されたのか
報道によると、背景のひとつは野党議員が国会で「公有地・森林保護区・ビーチが名義貸しを使ったリゾート開発に事実上占拠され、調査中に殺害予告まで受けた」と告発したことです。パンガン・サムイ・プーケットなどでは、違法就労やマネーロンダリングを伴う外国人によるビジネス支配への地元住民の反発も強まっています。
タイ政府としては、観光収入を維持しながら違法ビジネスを排除し、地元タイ人事業者の競争環境を守るという二つの狙いがあり、その象徴として今回の大規模調査に踏み切った形です。
旅行者・在住者へのポイント
- 一般の旅行者への直接影響は限定的ですが、調査対象エリアでは違法営業のヴィラや無許可ホテル、外国人経営のグレーなツアー会社が突然閉鎖されるケースが今後増える可能性があります。極端に安い無許可ヴィラや現金払いのみの業者には注意が必要です。
- タイで会社設立・飲食店・不動産投資を検討している日本人は要注意です。「タイ人株主を入れているから大丈夫」という認識だけでは不十分で、タイ人株主が実際に出資しているか、経営に実質的に関与しているかが重要な判断基準になります。
- 外国人株主がいる会社そのものが違法というわけではありません。問題は法律上タイ企業に見せながら実質的に外国人が支配しているケースです。現在の会社スキームに不安がある場合は、専門の弁護士・会計士に早めに相談することを推奨します。
- 飲食店・マッサージ・旅行業・不動産・ヴィラ運営・ホテル宿泊関連・土地保有を絡めたスキームは、今後さらにチェックが厳しくなる見通しです。
上記の記事は、タイの大手メディアおよび現地メディアの報道をもとにまとめています。
まとめ
タイ商務省DBDによる今回の大規模調査は、プーケット・パタヤ・サムイ島・パンガン島・ホアヒンなど主要観光地で外国人株主が関与する会社45,356社を確認し、5万社超を重点調査対象とする過去最大規模の取り締まりです。名義貸しが確定した場合は外国人・タイ人双方に禁錮・罰金・資産差押えが科される可能性があり、会社設立時の審査強化により高リスク申請はすでに75%減少しています。「書類上だけタイ人名義」という手法が通用しなくなった現在、タイでビジネスを行う外国人には適法な企業運営の見直しが急務となっています。
これらのニュースはタイの慣習による悪影響との見方もあります。新規参入する際にタイ人側の株主比率が51%でなければならない。しかしながらコネクションがない限り出資するタイ人を見つけることは実質不可能なためエージェントによる名義貸しが横行していました。
いつの時代も悪用する人によって規制が厳しくなっていくのは世界共通なのかもしれません。
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よくある質問(FAQ)
名義貸し(ノミニー)とは何ですか?
タイ人が形式的な株主・取締役となり、実際の資金・経営・利益配分は外国人が握るスキームのことです。タイの外国人事業法や土地法などに抵触する可能性があり、今回の調査対象となっています。
外国人株主がいる会社はすべて違法ですか?
いいえ、外国人が株主として入っている会社そのものが違法というわけではありません。問題は、法律上はタイ企業に見せながら実質的に外国人が支配しているケースです。適法な外資参入と名義貸しは明確に区別されます。
違反が確定した場合、どのような罰則がありますか?
外国人事業法に基づき、最長3年の禁錮、10万〜100万バーツの罰金が科される可能性があります。また、裁判所命令に従わない場合は毎日1万〜5万バーツの追加罰金が発生し、会社の登記抹消・資産差押え・刑事告発も行われます。
名義を貸したタイ人も処罰されますか?
はい、名義を貸したタイ人も外国人と同罪として処罰対象になります。弁護士・会計士・一般市民を問わず刑事責任を問われる可能性があるため、タイ人パートナーにとっても重大なリスクです。
旅行者への影響はありますか?
一般の旅行者への直接的な影響は限定的です。ただし、調査対象エリアでは無許可のヴィラやホテル、グレーなツアー会社が突然閉鎖されるケースが今後増える可能性があります。宿泊先やツアー会社の選択には注意が必要です。
タイで合法的に会社を設立するにはどうすればよいですか?
タイ人株主が実際に出資し、経営に実質的に関与していることが重要です。2026年からは会社設立時にタイ人株主の資金移動履歴の提出が義務化されています。詳細はタイの専門弁護士・会計士に相談することを推奨します。
出典・参考サイト
- Commerce News Agency
- Matichon Online
- Thai PBS
- Nation Thailand
- Thairath English

著者:Keita Satou
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
- ライター紹介:https://enjoy-bkk.com/about/
- Facebook:https://www.facebook.com/thaimlinebkk
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