区役所職員ら逮捕で発覚した中国系犯罪ネットワークによる「マネロン」と「戸籍ロンダリング」の驚きの手口
2026年4月29日、バンコク・トンブリー区役所の登録担当職員を含む計6人が、
外国人にタイ人としての出生証明書を不正発行した疑いで逮捕されました。
捜査には国家汚職防止委員会(NACC)・特別捜査局(DSI)・
内務省地方行政局(DOPA)などが関与しており、
背景には中国系詐欺グループによる組織的なタイ国籍不正取得スキームの存在が浮かび上がっています。
報道によると、手口は単純な書類偽造にとどまらず、
タイ人男性を雇って中国人女性と偽装結婚させ、
中国で生まれた子どもを「タイ人の子」として戸籍に登録するという
組織的なスキームが使われていたとされています。
この記事のポイント
- 4月29日、バンコク・トンブリー区役所の登録担当職員を含む6人を逮捕
- 中国系詐欺グループがタイ人男性を雇い偽装結婚→子どもを「タイ人化」する手口
- 捜査のきっかけは約700億バーツのマネーロンダリング事件
- ナコンラチャシマ県でも中国人名義の偽出生届が45件に拡大
- スワンナプーム空港で中国人2人を拘束・タイIDで出入国しようとしていた
- バンコク都知事が全区で出生登録の審査プロセスを見直す方針を表明

1. 捜査のきっかけ:
700億バーツのマネーロンダリング事件
今回の出生証明書不正問題は、
2024年に逮捕された中国人・チェン・ヨン・ライ(Chen Yon Lai)容疑者の
捜査から発覚しました。
タイ大手メディアの報道によると、チェン容疑者は
東南アジア各地のコールセンター詐欺組織の資金洗浄役とされ、
約700億バーツのマネーロンダリングの疑いで摘発されました。
捜査の過程で不自然な点が浮かび上がりました。
チェン容疑者の中国人妻の子ども3人がなぜかタイ国籍を持っていたのです。
また別の報道によると、父母はいずれも中国籍であったにもかかわらず、
子どもたちがタイ国籍になっており、
タイ人の父親として出生を認証させる手口が使われた可能性があると
説明されています。
2. 驚きの手口:偽装結婚で子どもを「タイ人化」
タイの報道によると内務省地方行政局(DOPA)の説明として、中国系犯罪グループが使った具体的なスキームを報じています。
偽装結婚スキームの流れ
- ①タイ人男性を金で雇う:中国人犯罪グループが、タイ人男性に報酬を払い「紙の上だけ」の婚姻登録をさせる
- ②中国人女性と婚姻届を提出:このタイ人男性と中国人女性が婚姻登録を行う
- ③子どもをタイ人として登録:「このタイ人男性と中国人女性の間に生まれた子ども」として、中国で生まれた子どもをタイの戸籍システムに登録
- ④タイ国籍の取得:タイ国籍法では父または母のいずれかがタイ国籍であれば子どもはタイ国籍を取得できるため、子どもがタイ人として認定される
DOPAは公式声明で、タイ国籍を持つことで
外国人に制限されている不動産の所有・事業経営・自由な出入国が可能になり、
資金洗浄・名義貸し・犯罪組織の拡大に利用され得ると警告しています。
「これらは国家秩序と安全保障を大きく脅かす」としており、
厳格に摘発する方針を表明しています。
3. バンコク・トンブリー区役所職員ら6人逮捕
2026年4月29日、NACC・PACC・DOPA・DSIなどの合同捜査チームが
4カ所を一斉家宅捜索し、計6人を逮捕しました。
作戦名は「ย้อนเกล็ดมังกร(ヨーン・クレット・マンゴーン)」とされています。
逮捕された6人の内訳
- 公務員1名:バンコク都トンブリー区役所の登録セクション担当職員。容疑は職務権限の乱用・公文書偽造・虚偽証明など
- 民間人5名:偽の出生証明書発行・不正な登録申請を支援した外部協力者
発端は地方行政局が「無国籍者をタイ人に成りすまさせるため、出生証明書が不正発行されている」という苦情を受けたことでした。
4. ナコンラチャシマ県でも偽出生届が45件に拡大
ナコンラチャシマ県ムアン郡ポークラーン町でも
同様の偽出生届疑惑が浮上しています。
当初27件とされていたものが追加で28件が発覚し、
合計45件に拡大したとされています。
- 報道上では45件すべてが中国人名義とされている
- その中には双子として登録されたケースが6組含まれていた
- 問題の出生届では県内のスラナリーキャンプ病院が出生場所として使われた疑いがある
- 1人あたり1万〜3万バーツの利益供与があった疑いが報じられている
また、入国管理当局はスワンナプーム空港で
出国しようとしていた中国人2人を拘束しており、
確認したところ出生登録地がポークラーン地区になっていたとされています。
実際にタイIDを使って出入国・移動しようとしていた疑いがあるとみられています。
5. バンコク都・チャッチャート知事の対応
バンコク都のチャッチャート知事は逮捕者がトンブリー区役所の職員であることを認めた上で、以下の再発防止策を指示しました。
- 審査プロセスの見直し:1人の職員に出生登録の承認が集中しすぎていないか全区で確認
- 委員会形式への移行:1人の判断だけで承認できないよう、複数人によるチェック体制を検討
- 全区での一斉調査:副知事に対し、出生証明書の発行数が異常に多い箇所がないか過去の記録を遡って調査するよう指示
よくある質問(Q&A)
Q. なぜタイ国籍が犯罪グループにとって価値があるのですか?
A. タイ国籍を持つことで、外国人には制限されている
不動産の所有・事業経営・自由な出入国が可能になります。
DOPAは、資金洗浄・名義貸し・犯罪組織の拡大に利用され得ると警告しており、
国家安全保障を脅かす問題として厳格に取り締まる方針を表明しています。
Q. 今回の逮捕で事件は解決しましたか?
A. 捜査は継続中です。
ナコンラチャシマ県での偽出生届疑惑は45件に拡大しており、
全国的なネットワークの存在が疑われています。
当局はさらなる摘発を進める方針を示しています。
Q. 在タイ日本人の出生届・婚姻届の手続きに影響はありますか?
A. 直接的な影響は現時点では報じられていません。
ただし今回の件を受け、区役所での出生登録・婚姻登録の審査プロセスが
厳格化・多重チェック化される方向に向かう可能性があります。
手続きに時間がかかるケースが増える可能性がある点は
頭に入れておくとよいでしょう。
まとめ:国籍制度を悪用した「マネーロンダリング」と「戸籍ロンダリング」への対策強化
今回の事件は、単なる偽造書類事件ではありません。
タイの国籍制度・住民登録制度そのものを悪用した
「戸籍のロンダリング」ともいえる組織的な犯罪です。
タイ政府は、コールセンター詐欺・マネーロンダリングへの締め付けの一環として、
国籍・出生登録の「穴」を塞ぐ姿勢を鮮明にしています。
「金を払えば国籍・身分をなんとかする」という闇ブローカーのリスクは
今回の摘発で一気に上がっており、
利用する側も重い刑事責任(共犯・虚偽申告など)を問われ得る状況です。
多くの事業者が労働許可証の取得や株式会社のタイ側の出資比率などを遵守しているなか、こういった卑劣な手口は許される事ではありません。またこういったグレーな資金はタイで循環するはずもありません。また日本人相手にも怪しい出資話や法人設立のノウハウをSNSで募集しているのも見かけたことがありますので、ご注意ください。
この記事をブックマークして最新情報をチェックしてください。
またSNSのフォローもよろしくお願いします。
著者プロフィール

Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,700人)をはじめ、複数のSNSで合計7万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
- ライター紹介:https://enjoy-bkk.com/about/
- Facebook:https://www.facebook.com/thaimlinebkk
出典・参考サイト
- The Thaiger – Bangkok official among six arrested in birth certificate fraud case(2026/04/29)
- Amarin TV – ทลายแก๊งปั๊มสูติบัตรเถื่อน(2026/04/29)
- MGR Online – โผล่อีก! แจ้งเกิดทิพย์โคราช(2026/04/29)
- Bangkok Post – Exposed: How Chinese scammers register ‘Thai’ children
関連記事
- カオサンの店の9割以上が賄賂で成り立つ「無許可営業」タイ国会議員が衝撃告発
- Boltタイ撤退か 女子高生連れ去り未遂事件で陸運局が5月ライセンス更新拒否を示唆
- 2026年 タイ 禁酒日 祝日カレンダー

