タイ初 外国人犯罪者の国外退去ルールを整備 不法就労・名義貸しも対象に
タイ政府は2026年7月14日の閣議で、「国外退去に関する首相府規則案」を承認しました。これは、タイにおいて初めてとなる、外国人犯罪者や不法滞在者の強制送還に関する統一的な行政ルールです。これまでタイには国外退去に関する明確で統一された行政規程が存在せず、法務省・内務省・警察など複数機関をまたぐ手続きに時間がかかっていました。今回の規則化により、外国人犯罪者を迅速かつ確実にタイ国内から排除する枠組みが整えられます。
なぜ統一ルールが必要だったのか
報道によると、これまでタイでは外国人の国外退去に関する手続きが法務省・内務省・警察など複数の機関にまたがっており、統一された行政規程がありませんでした。そのため、対応に時間がかかり、外国人犯罪者が刑期を終えた後も速やかに送還されないケースがあったとされています。今回の規則化は、このプロセスを効率化し、対象者を迅速かつ確実にタイ国内から排除する枠組みを整える狙いがあります。
国外退去の対象となる「6類型」
今回の規則案では、以下の6つのいずれかに該当し、「公の秩序や善良な風俗を守るために必要」と判断された外国人が、即座に国外退去の対象として明記されました。

1. 不法入国、または不法滞在(オーバーステイ)
正規の手続きを経ずにタイへ入国した場合や、ビザの有効期限を超えて滞在を続けるオーバーステイが該当します。旅行者・在住者を問わず、最も基本的な違反類型です。
2. 外国人労働法に違反する不法就労
就労許可(ワークパーミット)を持たずに働く行為や、許可された職種・雇用主以外での就労が該当します。観光ビザでの就労や、許可範囲を超えた副業なども対象になり得ます。
3. 外国人事業法に違反する違法な事業経営
タイ人を名義上のオーナーにする「ノミニー」など、外国人事業法の規制を回避するための違法な事業運営が該当します。外資規制のある業種で、実質的に外国人が支配しながらタイ人名義を借りる手法がこれにあたります。
4. 公文書の偽造、または偽造文書の使用
出生証明書、婚姻証明書、就労許可、在留カードなど、公的な文書を偽造したり、偽造されたと知りながら使用したりする行為が該当します。以前タイムラインバンコクでお伝えした「偽の父親」による国籍不正取得スキームのような事案も、この類型に含まれる可能性があります。
5. 禁錮3年以上の刑罰に該当する犯罪の実行
タイの法律で禁錮3年以上の刑罰が科される重大な犯罪を実行した場合が該当します。薬物犯罪や詐欺、暴力犯罪など、重い刑罰が定められている犯罪類型が対象になり得ます。
6. 上記1〜5の違反・犯罪における、首謀者、使用者、または共犯者(支援者)
自らが直接違反行為を行っていなくても、他人による違反・犯罪の首謀者、雇用主(使用者)、または共犯・支援者と認定された場合も対象になります。この類型により、直接手を下していない事業主や仲介者にも国外退去のリスクが及ぶ点が重要です。
新制度による手続きの迅速化
制度の大きな変更点として、法務省(刑務局)と内務省のデータ連携が挙げられます。報道によると、外国人受刑者が刑期を終える前に、刑務局長から内務次官へ情報が共有され、釈放のタイミングに合わせて即座に国外退去命令を出せるようになります。その後は速やかに本国(国籍不明の場合は入国前の直前の滞在国)へ強制送還される仕組みです。
これまでのように、刑期を終えてから国外退去の手続きが始まる形ではなく、釈放と同時に送還プロセスへ移行できるようになる点が、今回の規則の大きな特徴です。
在タイ日本人・ビジネス環境への影響
この規則は、通常の適法な在住者には直接的な影響はありませんが、タイ国内でビジネスや採用を行う上でのコンプライアンスのハードルが一段と上がったことを意味します。
例えば、ウェブプラットフォームの運営やデジタルマーケティング領域において事業を展開・拡大していく過程でも、ビザや就労許可(ワークパーミット)の管理はこれまで以上に厳格に行う必要があります。もし、自社で就労資格のない外国人を雇用してしまったり、不適切なビザ代行業者を利用して偽造された公文書が提出されたりした場合、第6類型の「使用者・共犯(支援)者」とみなされ、事業主自身が国外退去のリスクを背負うことになりかねません。
また、第3類型の「外国人事業法違反」が明記されたことで、会社設立時の株主構成(タイ人名義の借用など)に対する取り締まりも今後さらに強化していくと予想されます。「これくらいなら見逃されるだろう」というグレーゾーンの慣習が厳しく排除されていく流れとして、在住外国人にとって注視すべきニュースとなっています。
在タイ日本人へのポイント
- ビザ・ワークパーミットの有効期限管理を徹底する
- 就労許可の範囲外の副業・アルバイトには関わらない
- 会社設立時のタイ人名義の借用(ノミニー)には関与しない
- ビザ代行業者を利用する場合、偽造書類を扱っていないか十分に確認する
- 従業員を雇用する立場にある場合、就労資格の確認を徹底する(自身が「使用者・支援者」とみなされるリスクがあるため)
タイの大手メディアおよび現地メディアの報道をもとにまとめています。
まとめ
タイ政府は2026年7月14日の閣議で、外国人犯罪者・不法滞在者の強制送還に関する初の統一ルール「国外退去に関する首相府規則案」を承認しました。不法入国・不法就労・違法な事業経営(ノミニー)・公文書偽造・重大犯罪・共犯者という6類型のいずれかに該当する外国人が、即座に国外退去の対象となります。
法務省と内務省のデータ連携により、受刑者の釈放と同時に国外退去命令を出せるようになるなど、手続きの迅速化も図られています。通常の適法な在住者への直接的な影響は少ないものの、事業運営・雇用管理におけるコンプライアンスの重要性は一段と高まっています。「これくらいなら大丈夫」というグレーゾーンの慣習が厳しく排除されていく流れとして、在住外国人は今後の運用に注視する必要があります。
在タイの既存の法人はもちろんですが、今回の決定によりますます日系の飲食なども含む中小企業の新規進出はますます困難になるという意見も見られます。もちろん名義貸しはよくないですが、日本人ワークパーミット取得条件である200万バーツの資本金と51%の資金を提供できるタイ人を見つけるのは至難の業です。今後はそういったクリーンな状態でのタイへの進出できる制度の制定が望まれます。
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よくある質問
タイで初めて、外国人犯罪者・不法滞在者の国外退去に関する統一的な行政ルールが整備されました。これまで複数機関をまたいでいた手続きが効率化され、刑期を終える前から送還準備を進められるようになります。
①不法入国・不法滞在、②不法就労、③外国人事業法違反(ノミニーなど)、④公文書偽造・偽造文書の使用、⑤禁錮3年以上の犯罪、⑥これらの首謀者・使用者・共犯者、の6つです。
通常の適法な在住者に直接的な影響はありません。ただし、事業運営や雇用管理においては、コンプライアンスのハードルが上がったといえます。就労資格のない外国人を雇用した場合、事業主自身が「使用者・支援者」とみなされるリスクがあります。
法務省(刑務局)と内務省のデータ連携により、外国人受刑者の釈放前に情報が共有され、釈放と同時に国外退去命令を出せるようになります。その後、速やかに本国または直前の滞在国へ送還されます。
ビザ・ワークパーミットの期限管理、就労許可範囲外の副業への不関与、ノミニーへの非関与、ビザ代行業者利用時の書類確認、従業員雇用時の就労資格確認が重要です。
出典・参考サイト
- Government Public Relations Department
- Bangkok Post

Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
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