タイ、外国人の禁止職種取り締まりを強化 理髪・マッサージ・運転手など40業種、罰金と国外退去も
タイ政府は2026年9月4日、外国人労働者とその雇用主に対する取り締まりを全国で強化すると発表しました。新しい法律ができたわけではなく、既存の外国人就労規制について、抜き打ち検査を継続・強化するという内容です。
本記事では、報道されている取り締まりの内容、罰則、対象となる職種、日本人在住者・経営者が注意すべき点を整理してお伝えします。

政府発表の概要
報道によると、タイ政府のパットダラサミー・トンサルワイ副報道官は、政府が関係機関に対して、外国人労働者、雇用主、外国人を使用する事業所への積極的な検査を続け、違反が見つかれば例外なく法的措置を取るよう指示していると発表しました。
- 発表日:2026年9月4日
- 発表者:パットダラサミー・トンサルワイ副政府報道官
- 対象:外国人労働者、雇用主、事業所
- 目的:不法就労の防止、タイ人向け職種の保護、人身取引の防止
今回のポイントは「新法」ではなく「既存規制の執行強化」であるという点です。外国人労働者管理に関する法律自体はすでに存在しており、今回はその運用・検査体制を強化するという発表です。
何が取り締まりの対象になるのか
報道によると、対象となる違法行為は大きく分けて2種類です。
- ・就労許可(Work Permit)を持たずに働いている外国人
- ・就労許可を持っていても、許可された範囲を超えた仕事をしている外国人
- ・観光VISAやノービザで働く外国人
ここで重要なのは、「Work Permitを持っていれば大丈夫」というわけではないという点です。就労許可があっても、記載されている業務内容と実際の作業内容が異なる場合は、取り締まりの対象になり得るとされています。
報道によると、タイでは外国人の就労について合計40種類の禁止・条件付き職種が定められており、そのうち27種類は原則として外国人に全面的に禁止されています。今回の発表で名指しされた代表例は次のとおりです。
外国人に禁止されている職種(27業種)
タイ政府広報局(THAILAND.GO.TH)によると、2020年の労働省令に基づき、地域を問わず外国人の就労が禁じられている職種は次の27業種です。
- ・木材彫刻
- ・国内輸送機械運転または国内非機械運転
(国際線空輸またはフォークリフトの運転を除く) - ・競売
- ・宝石の切削や研磨
- ・散髪師、理容師または美容師
- ・手作業による機織
- ・ござ織り、またはアシ・藤・麻・竹を原料とする加工用品の製造
- ・手すき紙製造
- ・漆器製造
- ・タイ特産楽器製造
- ・ニエロ細工
- ・金銀細工
- ・青銅器生産
- ・タイ特産玩具の製造
- ・金属鉢の製造
- ・絹手工芸品の製造
- ・仏像の製造
- ・紙製または布製の傘の製造
- ・仲介業または代理店業
(国際業務を除く) - ・タイ式マッサージ
- ・手巻きタバコ
- ・観光ガイドおよび観光業
- ・行商および露店業
- ・タイ語のタイピング
- ・手作業による絹製糸
- ・秘書
- ・法律または訴訟に関する業務
(仲裁人業務、タイ法以外に関連する紛争の仲裁支援・仲裁代理を除く)
労働許可証(Work Permit)なしで就労した外国人、または就労資格の範囲外で就労した外国人には、5,000〜50,000バーツの罰金が科され、退去強制が命じられます。
なお、報道によっては「40業種」「39業種」という表現も見られますが、これは完全禁止の27業種に、一定の条件下でのみ就労可能な「条件付き制限業種」(会計、土木エンジニアリング、建築など)を合わせた総数を指しているとみられます。両者は法的な扱いが異なるため、本記事では政府広報局が明示する「完全禁止27業種」を正式なリストとして掲載しています。
またこれらは外国人が就労できない業種であって上記の該当業種にあたる会社経営やマネジメントについてはできる場合もあります。
2026年度の取り締まり実績
報道によると、タイ労働省雇用局(DOE)が2026年9月2日に発表した2026年度(2025年10月〜2026年9月1日)の取り締まり実績は次のとおりです。
- 査察対象事業所数:全国74,265事業所
- 法的措置を受けた雇用主・企業:1,721件
- 査察対象の外国人労働者数:888,620人
- 起訴・法的処分を受けた外国人:5,330人
- うちタイ人専属職種の侵害で摘発された外国人:1,792人
なお、報道によって数値がやや異なる場合があります(例:摘発された雇用主の数を「1,329社」とする報道もあります)。本記事では、タイ労働省雇用局の最新発表(9月2日付)の数値を採用しています。
罰則の内容
報道によると、外国人労働者本人と雇用主それぞれに、次のような罰則が定められています。
外国人労働者本人
- 罰金5,000〜50,000バーツ
- 罰金支払い後、原則として即時国外退去
- 退去後2年間、就労許可(Work Permit)の再申請禁止
雇用主(企業・店舗経営者)
- 初犯:外国人1人あたり10,000〜100,000バーツの罰金
- 再犯:1年以下の禁錮、または外国人1人あたり50,000〜200,000バーツの罰金
(併科の場合あり) - 再犯の場合、3年間の外国人雇用が全面禁止
- 労働者の身分証明書を不当に保管していた場合、6か月以下の禁錮または1人あたり10,000〜100,000バーツの罰金
外国人労働者にとって最も大きな影響は、罰金そのものよりも「国外退去+2年間の就労許可禁止」です。雇用主にとっては、罰金に加えて「3年間の外国人雇用禁止」が重い措置となります。
日本人在住者・経営者への注意点
正しい在留資格とWork Permitを取得し、許可された業務内容の範囲内で働いている日本人駐在員であれば、今回の取り締まり強化を過度に恐れる必要はありません。今回政府が対象としているのは、無許可就労、許可範囲外の業務、外国人禁止職種での就労、違法な雇用です。
一方で注意が必要なのは、「会社を経営しているから何をしてもいい」「Work Permitがあれば社内でどんな業務でもできる」という誤解です。特に、日本人が経営する飲食店、美容関連、旅行関連、小売店などでは、実際に本人が行っている作業がWork Permitで認められた就労範囲に含まれているかを確認しておくことをおすすめします。
例えば、「飲食店を経営すること」と「店頭で接客・レジ打ちをすること」は、法律上同じ概念とは限りません。管理職として登録されているにもかかわらず、実際には現場で調理や接客、レジ打ちを常態的に行っている場合、不法就労と判断されるリスクが指摘されています。
また、観光目的で入国した外国人が、無給であっても知人の店舗を手伝うなどの行為をした場合、これも状況によっては就労とみなされる可能性があります。「無給だから就労にあたらない」と単純に考えるのは危険です。あわせて、9月15日から予定されているノービザ滞在の60日から30日への短縮とも関連し、入国管理と労働局の連携が強化されているとされています。
外国人排除ではなく「制度内での管理」を目指す方針
今回の取り締まり強化は、外国人労働者を一律に排除する方針ではありません。タイ政府は同時に、企業側の労働力不足を背景に、ミャンマー・ラオス・カンボジアからの一定の外国人労働者について、約77万人を対象に滞在・就労手続きを延長する措置も決めているとされています。
つまり方針としては、必要な外国人労働者は正規の制度内で受け入れつつ、無許可就労や禁止職種への侵入は排除するという、両立を図る形になっています。
タイの大手メディアおよびタイ政府・労働省雇用局の発表をもとにまとめています。
まとめ
今回の話題は、タイ政府が外国人労働者と雇用主に対する取り締まりを全国で強化するというものです。2026年度は74,265事業所、約88万人の外国人労働者を検査し、5,330人を法的措置の対象としています。外国人本人には罰金と国外退去、2年間の就労許可禁止、雇用主には罰金と最大3年間の外国人雇用禁止という重い措置が科される可能性があります。
これは新法の制定ではなく、既存の規制の執行強化です。正規の資格・業務範囲内で働いている日本人には過度に心配する内容ではありませんが、Work Permitの業務範囲外での労働には十分な注意が必要です。また自分はWPを持っているのでタイでどんな仕事をしていると勘違いしてはいけません。SNSで見かけるボランティア募集や簡単な謝礼をお支払いしますというのも不法就労にあたるケースもあるので、十分にご注意ください
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よくある質問(FAQ)
Q1. これは新しい法律ができたということですか?
いいえ。既存の外国人就労規制について、検査・取り締まりの体制を強化するという発表です。新たな禁止職種が追加されたわけではありません。
Q2. Work Permitを持っていれば安心ですか?
いいえ。Work Permitがあっても、許可された業務内容の範囲を超えた仕事をしている場合は取り締まりの対象になり得ます。登録されている職務内容と実際の業務内容が一致しているか確認することが重要です。
Q3. 無給で知人の仕事を手伝う場合も対象になりますか?
状況によっては対象になる可能性があります。タイの外国人就労管理法では、有償・無償を問わず、タイ国内での身体的・精神的な活動は「労働」とみなされる場合があるとされています。「無給だから問題ない」と単純に判断するのは避けた方が安全です。
Q4. 別の会社でWork Permitを持っている場合、飲食店やBARでアルバイトはできますか?
できません。Work Permitは特定の雇用主・特定の業務内容に対して発行されるものです。別の会社ですでにWork Permitを持っていても、それとは別の飲食店やBARで働く場合は、その職務・雇用主に対応した新たなWork Permit(または既存の許可への追加登録)が必要です。無許可のまま副業的にアルバイトをすると、不法就労とみなされるリスクがあります。
Q5. 短期間のアルバイトであれば、Work Permitがなくてもリゾートバイトは可能ですか?
いいえ。タイの外国人就労管理法では、期間の長短や有償・無償を問わず、タイ国内での労働はすべて「就労」とみなされます。「短期間だから」「観光ビザだから」という理由でWork Permitが不要になるわけではなく、無許可のリゾートバイトも不法就労に該当する可能性があります。
Q6. タイでWork Permitを取得する方法を教えてください
一般的な流れは次のとおりです。ただし、雇用形態や在留資格の種類によって手続きは異なるため、詳細は労働省雇用局(DOE)や専門家に確認することをおすすめします。
- 雇用主となるタイ国内の会社が、雇用契約・事業内容を整えたうえで雇用局へ申請する
- 外国人本人が、就労を目的とした非移民ビザ(Non-Immigrant B等)を取得する
- 雇用局へWork Permitを申請し、職務内容・勤務先を登録する
- 発給後は、登録された職務内容・勤務先の範囲内でのみ就労が認められる
禁止職種(前述の27業種)に該当する仕事や、登録内容と異なる業務は、Work Permitを保有していても認められない点に注意が必要です。
出典・参考サイト
- Thai PBS:政府発表・罰則内容に関する報道記事
- The Thaiger:取り締まり強化に関する報道記事
- タイ労働省雇用局(DOE):2026年度取り締まり実績の公式発表
- Thairath English:取り締まり実績の詳細統計に関する報道記事
- タイ政府広報局(THAILAND.GO.TH):外国人禁止職種の公式リスト

Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
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