タイで「土壌熱・類鼻疽菌」による感染者3,102人・死者136人に 雨季の冠水地域で注意を呼びかけ
タイ保健省疾病管理局(DDC)は10月29日、「土壌熱(メリオイドーシス/類鼻疽)」の感染者が2026年1月1日から10月27日までの累計で3,102人、死亡136人に達したと発表しました。致死率は4.38%です。雨季が続く一部地域では水たまりや湿った土壌が増えており、特に農業従事者や糖尿病などの持病がある人、洪水被害地域の住民に注意が呼びかけられています。この記事では、土壌熱の感染経路や症状、バンコク在住者・旅行者が気をつけるべき点を解説します。
発表の内容
今回発表された3,102人・死亡136人という数字は、2026年1月1日から10月27日までの累計であり、直近数日間に新たに136人が亡くなったというニュースではありません。
また、致死率4.38%は「報告された感染者のうち死亡した人の割合」を示す数値であり、土や泥水に触れた人が4.38%の確率で死亡するという意味ではない点にも注意が必要です。
このうち1,828人が入院しています。人口10万人あたりの報告患者数が最も多い年代は60歳以上で、次いで50〜59歳、40〜49歳と続いています。なお、2026年の感染者数は過去5年間の中央値をやや下回っており、今年になって突然急増した、あるいは過去に例のない規模で広がっているというニュースではありません。一方で、雨季・洪水時には例年注意が必要とされています。
土壌熱(類鼻疽/メリオイドーシス)とは
土壌熱は、タイ語で「โรคไข้ดิน(ローク・カイディン)」と呼ばれ、直訳すると「土の熱」を意味します。日本語では「類鼻疽(るいびそ)」、医学名では「メリオイドーシス(Melioidosis)」とも呼ばれます。原因となるのは、土壌や淡水などに生息する類鼻疽菌(バークホルデリア・シュードマレイ)という細菌です。東南アジアやオーストラリア北部などの熱帯地域で広く知られている感染症で、タイでは以前から報告されています。
感染経路
- 傷口や粘膜からの感染:汚染された土や泥水が、足の傷や擦り傷に触れることで感染
- 吸入感染:強い雨や風で菌を含む土壌の粒子や水滴が空気中に舞い上がり、吸い込むことで感染する場合がある
- 経口感染:汚染された未処理の水や食品を摂取することで感染することがある
なお、人から人への感染は極めてまれで、風邪やインフルエンザのように会話や通常の接触で容易に広がる病気ではありません。
症状と潜伏期間
タイ疾病管理局は潜伏期間を通常4〜9日程度と説明していますが、米疾病対策センター(CDC)は一般的に1〜3週間程度と幅をもたせて説明しており、感染後1日で発症することもあれば、まれに数年間症状が出ないまま潜伏することもあります。初期症状は発熱、咳、呼吸困難など一般的な感染症と似ているため診断が難しいとされ、重症化すると皮膚・肺・肝臓・脾臓などに膿瘍ができたり、敗血症を起こし命に関わることもあります。
治療
抗菌薬による治療が可能な細菌感染症ですが、治療期間は長期に及ぶことがあります。米CDCの説明では、点滴による抗菌薬治療を2〜8週間、その後に飲み薬での治療を3〜6か月続けるのが一般的とされています。診断には細菌培養検査が必要で、治療を途中で中断すると再発する可能性があるため、医師の指示に従って治療を完了することが重要です。
感染リスクが高い人
- 農業や建設など、土や水に直接触れる仕事をしている人
- 洪水・冠水地域に住んでいる人や清掃作業を行う人
- 糖尿病、慢性腎臓病、サラセミアなどの持病がある人
- 免疫機能が低下している人
- 高齢者、とくに60歳以上の人
健康な人でも感染する可能性はあります。報道によると、今回の発表では報告の多くがタイ東北部(イサーン地方)に集中している傾向が伝えられていますが、県別の具体的な患者数や順位は今回の全国発表には含まれていません。原因となる細菌はタイ全域の土壌や水に存在する可能性があり、バンコクや近郊が感染リスクのない地域というわけではない点には注意が必要です。
「ネズミ尿病」との違い
タイでは洪水時に土壌熱と「ネズミ尿病(レプトスピラ症)」の両方が注意喚起されるため、混同されることがありますが、別の感染症です。
- 土壌熱(類鼻疽):原因は類鼻疽菌。汚染された土や水から感染し、発熱・肺炎・膿瘍・敗血症などを引き起こす
- ネズミ尿病(レプトスピラ症):原因はレプトスピラ菌。感染動物の尿で汚染された水や土から感染し、発熱・筋肉痛・頭痛・目の充血などを引き起こす
いずれも泥水への接触を避け、長靴や手袋を使用するという共通の対策が有効ですが、症状が重なることもあり、自己判断で区別することは困難です。
旅行者・在住者へのポイント
今回のニュースについて、通常の生活で過度に不安になる必要はありません。リスクを考えるうえで重要なのは「住んでいる場所」そのものよりも、土壌や冠水した水への接触があるか、持病があるかという行動・体質の面です。バンコク在住者や旅行者は、特に次のような場面で注意してください。
- 冠水した道路の徒歩移動
- 洪水後の住宅清掃
- ガーデニングや土いじり
- 農村部での野外活動
DDCが推奨する予防策は次のとおりです。
- 冠水した道路や泥の中をできるだけ歩かない
- やむを得ず泥水に入る場合は、長靴・ゴム手袋・長ズボンなどを着用する
- 土や泥水に触れた後は、清潔な水と石けんでしっかり洗う
- 傷口がある場合は適切に洗浄・保護し、治るまで土や水との接触を避ける
- 安全性が確認された飲料水を飲み、食品は十分に加熱する
- 強風を伴う大雨の際は、土壌由来の飛沫や粉じんへの暴露を避ける
土や水に触れた後、2日以上高熱が続く場合は速やかに医療機関を受診してください。息苦しさや意識がぼんやりする、強い衰弱などがあれば、2日間待たずに緊急受診することが推奨されています。特に糖尿病などの持病がある人は早めの受診が重要です。受診の際は、冠水した道路を歩いた、泥水で清掃した、土を扱ったなどの行動歴を医師に伝えてください。
タイの大手メディアおよび現地メディアの報道をもとにまとめています。
まとめ
タイ保健省疾病管理局は、2026年1月1日から10月27日までの累計で土壌熱(メリオイドーシス)感染者3,102人、死亡136人を確認したと発表しました。この数字は年初来の累計であり、今年の感染者数はむしろ過去5年の中央値をやや下回っています。ただし雨季・洪水時には引き続き注意が必要で、原因菌はバンコクを含むタイ全域の土壌や水に存在する可能性があります。冠水した道路や泥への接触を避け、触れた後はしっかり洗う、高熱が2日以上続く場合は受診するといった基本的な予防策を心がけましょう。
タイでは日本には馴染みのない菌や感染症などが多数報告されています。また農作物や肉類の保管方法や輸送方法も日本と違い野ざらし状態であったり、きちんとした洗浄がされていないケースも多々ありますので私自身はタイでの料理などをするときは注意しています。
FAQ
死者136人は最近急増したのですか?
報道によると、136人という数字は2026年1月1日から10月27日までの累計であり、直近で急増したわけではなく、今年の感染者数は過去5年間の中央値をやや下回っています。
致死率4.38%とはどういう意味ですか?
報道によると、これは報告された感染者のうち死亡した人の割合を示す数値であり、土や泥水に触れた人が4.38%の確率で死亡するという意味ではありません。
バンコクでも感染するリスクはありますか?
報道によると、原因菌はタイ全域の土壌や水に存在する可能性があり、バンコクも例外ではありません。冠水した道路を歩く、泥に触れるなどの行動がある場合は注意が必要です。
どんな症状が出たら受診すべきですか?
報道によると、土や水に触れた後、2日以上高熱が続く場合は受診が推奨されます。息苦しさや意識がぼんやりする、強い衰弱などがあれば、2日間待たずに緊急受診してください。
ネズミ尿病とは違う病気ですか?
はい、別の感染症です。土壌熱は類鼻疽菌、ネズミ尿病はレプトスピラ菌が原因で、症状が似ている部分もありますが、泥水への接触を避けるという共通の予防策が有効です。
出典・参考サイト
著者プロフィール

Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
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