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バンコク全域が洪水災害区域に 一部で買い占め発生も 『2011年規模の洪水はない』と専門家の予想

「バンコク全域が洪水災害区域 一部で買い占めが発生も 2011年規模の洪水はないと予想」の文字と、冠水した道路に水没する車、雨の中を歩く人々の写真(撮影:Keita Satou)
keita satou

バンコク都は2026年9月26日、チャッチャート・シッティパン都知事の署名により、都内全50区を「災害被災区域(洪水)」に指定したと発表しました。

効力は9月25日に遡って発効しています。連日の記録的な豪雨で道路冠水や住宅浸水が広がり、一部では2011年の大洪水を想起した市民による買い占めも発生しました。

一方、専門家2名は「2011年のような全国規模の大洪水が再来する可能性は極めて低い」との分析を示しています。本記事では、指定の実態と、専門家が再来を否定する根拠、そして旅行者・在住者が今知っておくべき注意点を整理してお伝えします。

バンコク全50区が「災害被災区域」に指定

バンコク都庁(BMA)は当初、東部のノンチョーク区、スアンルアン区、カンナーヤーオ区の3区のみを災害被災区域に指定していましたが、雨が止まず道路冠水や交通障害、住宅への浸水被害が拡大したため、対象を都内全50区へ拡大しました。

ここで注意したいのは、「全50区指定」が「50区すべてが同程度に浸水している」という意味ではない点です。これはあくまで、行政機関が市全域を対象に迅速な災害対応を取れるようにするための法的・行政的な指定であり、2007年の防災・減災法などに基づいています。指定により、以下のような対応が取りやすくなります。

  • 洪水状況の監視と情報共有
  • 緊急予算を活用した排水・ポンプ作業
  • 道路・交通の管理
  • 被災住民への支援、避難所開設
  • 関係機関の合同対応、救助・避難支援

また、タイ防災減災局(DDPM)は9月26日午前9時22分、市民のスマートフォンへ緊急警報(セルブロードキャスト)を配信し、運河の水位が危険水準に達しているとして警戒を呼びかけました。BMAは冠水道路の交通量を減らすため、9月28日(月)のBMA管轄校を休校とし、在宅勤務(WFH)も推奨しています。

記録的な豪雨と排水能力の限界

報道によると、バンコクの2026年9月1日〜25日の積算雨量は約487mmに達し、平年(1991〜2020年平均:約269mm)の約1.8倍を記録しました。さらに9月24日午後から26日にかけては、市内の一部で累積雨量が300mmを超えた地域もあったとされています。

この短期間の集中豪雨により、プレムプラチャーコーン運河、ラートプラオ運河、センセープ運河、プラウェートブリーロム運河など主要運河が満水、または一部で越水する状態になったと報じられています。道路の雨水は排水溝を通じて運河へ流れますが、運河自体が満水のため排水が追いつかず、冠水が長時間残る構造になっているとのことです。

BMAは市内の排水ポンプを毎秒約1,200立方メートル規模でフル稼働させていますが、流入量の多さと運河の高い水位により排水に時間がかかっています。チャッチャート都知事は「これ以上大きな雨が降らなければ2〜3日程度で排水できる」との見通しを示しました。

通行止めとなった主な道路・休校措置

9月26日午後の時点で、以下13本の主要道路について「小型車での通行が困難、または不可能」と報告されています。

  • エカマイ通り
  • ウィパワディー・ランシット通り
  • ガムウォンワーン通り
  • ラームカムヘーン通り
  • セーナーニコム周辺
  • チェーンワッタナ通り
  • シーナカリン通り
  • パホンヨーティン通り ほか

朝の時点ではさらに多くの道路で冠水が確認されており、その後排水が進んだ箇所もあります。特にミンブリー区、クローンサームワー区など、バンコク東部は低地や運河沿い、洪水調整地域が多く、水が抜けにくい傾向にあります。

一部で買い占めも発生 小売業界「供給は正常」

2011年の大洪水を想起した市民の一部が9月26日早朝からMakroやLotus’sなどのスーパー、コンビニに殺到し、飲料水やインスタント麺、レトルト食品、卵などを買い占める動きが見られました。

これに対しタイ小売業者協会および大手スーパー各社は、「物流網は正常に機能しており、在庫の補充も継続して行われているため、過度な買いだめをする必要はない」と冷静な対応を呼びかけています。

専門家「2011年のような大洪水の再来は極めて低い」

ランシット大学気候変動・災害センターのセーリー・スパラーティット准教授と、カセサート大学のトーン・タムロンナーワーサワット准教授は、「2011年のような全国規模の壊滅的大洪水が起きる可能性は実質的にほぼない」との見解を示しています。主な根拠は以下の3点です。

根拠① 北部からの流入水量が2011年の半分以下

2011年の大洪水時、水位の重要な観測地点であるナコーンサワン付近を通過した水量は最大で毎秒約4,600立方メートルに達しましたが、現在は毎秒約1,800立方メートルにとどまっています。チャオプラヤーダムの放流量も毎秒約1,850〜1,950立方メートル程度に抑えられており、ダムの放流許容量(最大毎秒約2,700立方メートル)の範囲内で管理されています。

根拠② 気候条件と台風の有無

2011年は春先から強いラニーニャ現象の影響で雨季前から平年の約2倍の降雨があった上、5つの大型熱帯低気圧・台風がタイを直撃しました。一方2026年はエルニーニョ傾向にあり、現時点でタイを直接襲った大型サイクロンや台風は確認されていません。

根拠③ 冠水面積が10分の1以下

タイ宇宙航空技術開発庁(GISTDA)の衛星データによると、2011年8月時点の全国累積浸水面積は約91万2,000ヘクタールでしたが、2026年8月時点は約6万4,000ヘクタール未満と、10分の1以下の規模にとどまっています。

今回の洪水の正体は「局地的な内水氾濫」

今回バンコクで起きている冠水は、北部からの巨大な水の塊がチャオプラヤー川を南下して街を飲み込む「流域型洪水」ではなく、狭い地域に短時間で大量の雨が降る「レインボム」によって都市の排水能力が一時的に追いつかなくなった「内水氾濫(都市型洪水)」だと専門家は分析しています。雨雲の主帯は9月26日午後から西部(カンチャナブリー県、ラーチャブリー県など)へ移動しており、バンコク周辺の降雨は9月27日以降大幅に減少し、28日にはおおむね平常の状態に戻ると予測されています。

それでも油断はできない 「レインボム」への警戒は継続

「2011年の再来ではない」という見通しは、現在の局地的な浸水リスクを否定するものではありません。タイ気象局の9月27日午前5時発表では、バンコクおよび周辺県について、地域の80%で雷雨、一部で大雨になると予報されています。すでに大量の雨が降った地域では、追加の雨が比較的少量でも浸水が悪化する可能性があるとタイ気象局は警告しています。

また、チャオプラヤーダムの放流量増加に伴い、アユタヤなど堤防外の低地では水位上昇・浸水のリスクが続いています。バンコク東部(ミンブリー区、クローンサームワー区、ノンチョーク区、カンナーヤーオ区、スアンルアン区、プラウェート区など)は、低地や運河沿い、洪水調整地域が多く、引き続き注意が必要です。

旅行者・在住者へのポイント

  • 過度な買い占めは不要:物流・供給は正常に機能しているため、冷静な対応を心がけましょう。
  • 冠水ルートは避ける:特にバンコク東部や運河沿い、低地エリアでは移動前に最新の道路状況を確認しましょう。
  • BTS・MRTなど鉄道網を優先:道路の冠水・渋滞の影響を受けにくい移動手段を選びましょう。
  • 雨が弱まっても油断しない:すでに地面に水を含んでいるため、少量の追加降雨でも再冠水する可能性があります。
  • 最新の公式発表を確認:タイ気象局・BMAの発表を随時チェックしましょう。

タイの大手メディアおよび現地メディアの報道をもとにまとめています。

まとめ

バンコク都は記録的な集中豪雨を受け、行政上の災害対応を迅速化するため全50区を「災害被災区域」に指定しました。一方、北部からチャオプラヤー川を下ってくる水量は2011年の半分以下にとどまっており、専門家は現時点で2011年のような流域全体を巻き込む大洪水になる可能性は極めて低いと分析しています。ただし、局地的な集中豪雨による道路冠水・住宅浸水のリスクは依然として残っており、油断せず最新情報を確認しながら行動することが重要です。

昨日の午前中にコンビニに行きましたが、カップ麺はすべて売り切れ状態でした。パンやお弁当や袋の即席めんなどは在庫がたくさんありましたが、今後も雨が降り続くようであれば、まずは飲料水の確保。タイでは水道水を直接飲むことは推奨されませんのでこちらの確保をまずはおすすめします。

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よくある質問(FAQ)

Q1. バンコク全50区が浸水しているということですか?

いいえ。「全50区が災害被災区域に指定された」のは、行政機関が市全域で迅速に災害対応(排水作業、救助、予算執行など)を行えるようにするための法的・行政的な措置です。50区すべてが同程度に浸水しているという意味ではありません。

Q2. 2011年のような大洪水になる可能性はありますか?

専門家2名は「可能性は極めて低い」と分析しています。北部からの流入水量が2011年の半分以下であること、台風の直撃がないこと、浸水面積が10分の1以下であることなどが根拠とされています。ただし局地的な集中豪雨のリスクは残っています。

Q3. 今、バンコクを旅行しても大丈夫ですか?

専門家は全国規模の大洪水の可能性は低いとしていますが、道路の冠水や交通障害は引き続き発生しています。移動前に最新の道路状況を確認し、可能であればBTS・MRTなど鉄道網を優先することをおすすめします。

Q4. 水はいつ頃引く見込みですか?

チャッチャート都知事は「これ以上大きな雨が降らなければ2〜3日程度で排水できる」との見通しを示しています。ただし雨が弱まった後も、運河や低地の水が完全に抜けるまでには数日かかる可能性があります。

Q5. 買い占めは必要ですか?

タイ小売業者協会や大手スーパー各社は「物流・供給は正常」と説明しており、過度な買い占めは不要とされています。冷静な対応が呼びかけられています。

出典・参考サイト

  • The Thaiger
  • Thai PBS
  • Nation Thailand
  • Bangkok Biz News
  • タイ国政府広報局(PRD)
  • タイ気象局(TMD)

著者プロフィール

タイムラインバンコク編集部keitasatouのアイコン

Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。

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Keita Satou
Keita Satou
タイ在住ライター
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
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