日本向け覚醒剤密輸事件の続報 バンコクでベトナム人9人を拘束、6人を薬物容疑で立件
日本行きの荷物として渡されたタマリンドペーストの容器から、約2キログラムの覚醒剤が見つかった事件で、タイ警察は捜査を拡大しています。2026年7月21日、バンコク市内の住宅を捜索し、ベトナム国籍者9人を拘束、そのうち6人を薬物関連の容疑で立件しました。なお「9人が密輸容疑で逮捕された」わけではなく、9人を事情聴取・薬物検査した結果、6人が立件されたという段階です。
これまでの経緯(前回記事のおさらい)
報道によると、事件はタイと日本の間で荷物を運ぶ「持ち帰り・買い物代行」の仕事をしていたタイ人女性が、不審な荷物を警察へ届け出たことで発覚しました。女性は7月3日、SNS経由で日本へ荷物を運んでほしいとの依頼を受け、7月4日に荷物を受け取っています。
荷物には、タマリンドペーストの容器6個などが入っており、女性は持ち上げた際に通常より重いことを不審に感じました。女性は荷物を日本へ運ばず、7月13日に警察へ相談し、容器を確認したところ、内部にアルミホイルなどで包まれた白い結晶状の物体が隠されていました。検査の結果、結晶はメタンフェタミン(覚醒剤)で、総重量は約2.059キログラムでした。
荷物は女性の手荷物として日本の東京へ運ばれ、現地で別の人物へ引き渡される予定だったとみられています。

送金口座の名義人であるタイ人男性を先に逮捕
警察は、運び役の女性へ支払われた報酬の送金記録を調べ、銀行口座の名義人であるタイ人男性(ソムポン容疑者、50歳)を特定しました。ソムポン容疑者は7月16日、パトゥムターニー県タンヤブリー地区の住宅で逮捕されています。
報道によると、ソムポン容疑者は、ベトナム人女性と約1年間交際しており、外国人で銀行口座を利用しにくかったため、自分名義の口座を使わせていたと説明しています。一方で、口座がどのような取引に使われていたかは知らなかったとして、薬物密輸への関与を否定しています。これは容疑者側の説明であり、警察は資金の流れや通信記録を調べています。ソムポン容疑者は7月18日に裁判所へ送られ、警察は逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとして保釈に反対しました。
バンコク4カ所を一斉捜索、ベトナム人9人を拘束
ソムポン容疑者の銀行口座、連絡先、荷物を回収した配達員の記録などを調べた結果、警察はベトナム人グループが利用している可能性のあるバンコク市内4カ所を特定しました。
2026年7月21日、警視庁麻薬対策部門、バーンイーカン警察署、ラートプラオ警察署などの合同チームが、ブンクム区とバンカピ区の住宅を捜索しました。最初の3カ所では違法物は見つかりませんでしたが、4カ所目となるバンカピ区クローンチャン地区の住宅で、ベトナム人グループを発見しています。この住宅は、問題の日本向け荷物を配達員が受け取った場所と関係しているとみられています。
報道によると、捜索場所はラートプラオ・ソイ101、分岐46にある賃貸の3階建てタウンハウスで、7月21日午後5時30分ごろに行われました。警察は住宅内から、エクスタシーとみられる錠剤3錠と、量が公表されていないコカインを発見したとされています。
9人を検査、6人を薬物容疑で立件
現場にいたベトナム人9人(男性1人、女性8人)はラートプラオ警察署へ連行され、尿検査などを受けました。その結果、男性1人と女性5人から薬物反応が確認されたとされています。
女性5人は、許可なく第1種麻薬を使用した容疑で立件されました。男性1人は、第1種麻薬を所持した容疑で立件されています。ただし、この6人に日本向け覚醒剤2.059キログラムの密輸を直接計画した容疑が適用されたとの発表は、現時点では確認できません。現在の立件内容は、住宅で発見された薬物の使用・所持に関するものです。
拘束されたベトナム人らは事情聴取に対し、タイへ仕事をするために来たと説明しています。「Do Nhu」と呼ばれる人物が、接客や同席などのエンターテインメント関連の仕事を手配しており、1回当たり700バーツの報酬を受け取っていたと供述したと報じられています。グループは同じ住宅で共同生活をしていましたが、国際的な薬物密輸組織への関与は否定しており、一部は過去の薬物使用のみを認めています。この段階では、住宅にいたことや薬物を使用していたことだけで、全員が日本向け密輸計画の構成員だったと断定することはできません。
タイの大手メディアおよび現地メディアの報道をもとにまとめています。
「9人全員が密輸組織」とはまだ確定していない
今回のニュースで注意したいのは、報道にある「9人拘束」を、そのまま「9人を日本向け覚醒剤密輸容疑で逮捕」と解釈しないことです。現時点で整理できる情報は次のとおりです。
- 現場から事情聴取のため連行された人数:9人(男性1人、女性8人)との報道
- 薬物使用・所持で立件された人数:6人
- 日本向け覚醒剤の密輸に直接関与したと確定した人数:捜査中
さらに、報道機関によって発見された人数の内訳(男女比)に違いがあり、現時点では警察の最終的な公式発表を待つ必要があります。
事件に関与した人物は約15人との見方
警察は初期捜査の段階で、この密輸計画に関わった人物が全体で約15人に上る可能性があるとみています。7月18日時点の報道では、逮捕状が出た人物はタイ人1人(ソムポン容疑者)とベトナム人3人とされ、ベトナム人3人は現金の引き出し、匿名SNSアカウントの運用、指示役などを担った疑いが持たれています。このうち1人は、すでにタイを出国したと報じられています。
警察は、住宅から押収したスマートフォンや通信機器などのデジタル解析を進め、SNSアカウント、送金記録、配達員との連絡、日本側の受取人に関する情報を確認する方針です。ソムポン容疑者の交際相手とされるベトナム人女性の旅券コピーも押収されており、追加の逮捕状申請に使用される見通しです。
現在の捜査状況
- 覚醒剤約2.059キログラムは押収済み
- 運び役として依頼された女性は警察へ自主的に通報
- 送金口座の名義人であるタイ人男性を逮捕・勾留
- バンコクの4カ所を捜索
- ベトナム人9人を拘束、うち6人を薬物使用・所持容疑で立件
- スマートフォンや電子機器を解析中
- 指示役、資金管理役、日本側の受取人を捜査中
- 容疑者の一部はすでにタイ国外へ出た可能性
まとめ
前回お伝えした「タマリンドペーストに隠された覚醒剤」の事件は、単発の運び屋のトラブルではなく、ベトナム人主体の国際的な密売ネットワークの疑いへと広がっています。ただし現時点では、9人が拘束・検査され、うち6人が薬物の使用・所持容疑で立件された段階であり、9人全員が密輸組織の構成員だったと確定したわけではありません。警察は指示役や日本側受取人の特定に向けて、捜査を継続しています。
在タイ日本人や駐在者の立場から見ると、この事件は「知人やSNS経由の荷物運び依頼には要注意」という前回の教訓を改めて裏付けるものだと感じます。今回発覚した拠点では、ベトナム人グループが「1回700バーツのナイトライフ関連の仕事」という名目でタイに滞在していたと供述しており、こうした曖昧な仕事の誘いが、意図せず犯罪組織との接点になり得る点も見逃せません。怪しい高収入の誘いには安易に乗らず、少しでも違和感を覚えたら、自分で処分せずに警察へ相談するという前回の教訓は、今回の事件でも変わらず重要です。
最近目立つ運び屋経由による麻薬密輸の手口、原則的に他人の荷物を預かっての渡航や帰国は避けてください。ぬいぐるみや絨毯の中、瓶詰の食品の中にも入っているケースもあります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 9人全員が密輸容疑で逮捕されたのですか?
いいえ。現場から事情聴取のため連行されたのは9人ですが、薬物使用・所持容疑で立件されたのは6人です。9人全員が日本向け密輸に関与したと確定した情報は、現時点で確認されていません。
Q2. 送金口座の名義人だったタイ人男性はどうなりましたか?
ソムポン容疑者(50歳)は7月16日に逮捕され、7月18日に裁判所へ送られました。警察は逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとして保釈に反対しています。容疑者本人は薬物密輸への関与を否定しています。
Q3. 密輸組織の全体像はわかっていますか?
警察は、関与した人物が全体で約15人に上る可能性があるとみています。7月18日時点で逮捕状が出ているのはタイ人1人とベトナム人3人で、指示役や日本側受取人の特定を含め、捜査が続いています。
出典・参考サイト
- Bangkok Post「Six Vietnamese detained for Tokyo-bound ‘ice’ in tamarind paste」
- The Nation「Police expand Japan-bound drug probe with four Bangkok raids」
- ASEAN NOW関連報道
- Thai PBS報道(2026年7月18日時点)

Keita Satou:バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
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