タイでインフルエンザ流行の兆し タイ保健省が最新調査を公表
タイ保健省医科学局は2026年11月5日、国内で流行しているインフルエンザウイルスの最新監視結果を公表しました。10月に確認されたインフルエンザ陽性検体122件のうち、115件(94.26%)がA型H1N1でした。また、タイ疾病管理局(DDC)の発表では、全国の患者報告数が過去5年間の中央値を上回る水準にあり、警戒が続いているとされています。子どもや高齢者を中心に、感染対策への注意が呼びかけられています。
タイのインフルエンザ最新データ
タイ保健省医科学局(Department of Medical Sciences)の発表によると、2026年1月〜10月に監視対象として提出された検体8,734件のうち、1,278件からインフルエンザウイルスが検出されました(陽性率14.63%)。年間を通じた内訳は、A(H1N1)pdm09が704件(55.09%)、A(H3N2)が306件(23.94%)、B型Victoria系統が268件(20.97%)でした。
一方、10月単月では、検体581件のうち122件が陽性(陽性率21.00%)で、このうち115件(94.26%)がA(H1N1)pdm09でした。ここで重要なのは、この94.26%という数字は「タイ国民の94%が感染している」という意味ではなく、10月の監視検査でインフルエンザ陽性となり、ウイルス型が判明した122検体のうち、H1N1が占める割合だという点です。また、年間の55%から10月の94%へ割合が変化したからといって、タイ全体の患者数が同じ割合で急増したとは判断できません。
タイ全国では実際に何人が感染している?
上記の1,278件はウイルス監視検査の陽性検体数であり、タイ全国の患者総数ではありません。別の統計として、タイ疾病管理局(DDC)は10月21日、2026年1月1日〜10月17日の全国インフルエンザ報告患者数が54万3,385人に達したと発表しています。直近の10月11〜17日の1週間だけでも1万5,309人が報告されており、患者の報告数は過去5年間の中央値を上回る水準にあり、警戒が続いているとされています。これら2種類の統計は別の監視制度に基づくもので、全国の患者数をすべてH1N1の患者とみなすことはできません。
年代別では、人口当たりの感染報告率が高いのは「5〜9歳」「1〜4歳」「1歳未満」の順とされています。学校や保育施設など、多くの子どもが集まる環境では感染が広がりやすいことが懸念されています。
H1N1とは? 2009年の新型インフルエンザと同じ?
今回報告されている「A(H1N1)pdm09」は、2009年に世界的な流行を引き起こした新型インフルエンザウイルスの子孫にあたります。その後も遺伝的な変化を続けながら世界各地で流行しており、現在は季節性インフルエンザの一つとなっています。つまり、2009年と同じ規模の新たな世界的大流行が発生したという意味ではありません。
タイ保健省の発表では、A(H1N1)pdm09のうち「6B.1A.5a.2a.1」と呼ばれる亜系統が2026年6月以降に増加し、主要な系統となっていると説明されています。これはウイルスの遺伝的な分類名であり、新しい亜系統が検出されたことだけで、感染力や重症化率が大幅に上昇したとは判断できません。
薬が効かない「耐性ウイルス」は確認された?
タイ保健省医科学局によると、A(H1N1)pdm09では、オセルタミビル(商品名タミフルなど)への耐性に関係する「H275Y」と呼ばれる遺伝子変異は検出されませんでした。10月に薬剤耐性に関する遺伝子解析を実施した127検体でも、調査対象となった耐性関連の変異は確認されていません。ただし、これは「調べた検体について耐性を示す既知の変異が見つからなかった」という結果であり、すべてのウイルスに薬が必ず効くことを意味するものではありません。
インフルエンザH1N1の症状
H1N1の症状は、ほかの季節性インフルエンザと大きく異なるわけではありません。発熱・頭痛・筋肉痛・咳・喉の痛み・倦怠感・鼻水などが主な症状で、子どもでは嘔吐・下痢がみられることもあります。感染してから症状が現れるまでの期間は1〜4日程度で、多くの人は回復しますが、一部では肺炎などの合併症を起こすことがあります。
呼吸困難、胸の痛み、意識障害、けいれん、著しい脱水、強い衰弱、いったん改善した発熱や咳の再悪化などの症状がある場合は、速やかに受診してください。子どもの場合は、呼吸が速い、肋骨の間がへこむように呼吸する、ぐったりして反応が悪い、尿が長時間出ないなどにも注意が必要です。
旅行者・在住者へのポイント
タイ保健省は、重症化リスクのある人を中心に毎年のインフルエンザワクチン接種を推奨しています。主な対象は、妊婦、生後6か月〜5歳未満の子ども、糖尿病・心臓病・慢性呼吸器疾患などの持病がある人、65歳以上の高齢者、免疫機能が低下している人、高度肥満の人、重度の障がいがある人です。ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、重症化や入院のリスクを下げるために重要とされています。今回H1N1が多く検出されたことだけを根拠に、ワクチンが効かないとは判断できません。日本人駐在員とその家族も、タイの病院で接種について相談できます。
タイ疾病管理局は、予防のための4つの行動「ปิด ล้าง เลี่ยง หยุด(覆う・洗う・避ける・休む)」を推奨しています。咳・くしゃみの際は口と鼻を覆い、症状がある場合はマスクを着用すること、手洗いやアルコール消毒をこまめに行うこと、体調不良者との接触や換気の悪い混雑した場所を避けること、体調が悪いときは登校・出勤を控えることです。日本人学校や現地校に子どもを通わせている家庭では、学校ごとの欠席・登校再開の基準を確認しておくことも大切です。BTSやMRT、オフィスなど人が集まる場所でも、換気・手洗い・体調不良時のマスク着用が感染リスクの低減につながります。
タイの大手メディアおよび現地メディアの報道をもとにまとめています。
まとめ
タイでは10月の検出例の94.26%がA型H1N1となり、全国の患者報告数も過去5年の中央値を上回る水準で推移しています。ただし、これは2009年のような新たな大流行ではなく、季節性インフルエンザとしての流行の兆しです。薬剤耐性のウイルスも現時点では確認されていません。子どもや高齢者のいるご家庭では、基本的な感染対策とワクチン接種の検討をおすすめします。
冬がないタイではインフルエンザの流行は少ないと考える日本人も多いですが、乾季は雨が降らないためにウイルス性の風邪やインフルエンザやPM2.5による被害が多くなる季節です。外で汗をかいた後に冷房が強い室内に入る寒暖差などで風邪をひく人が多いのも事実です。これからの季節のタイ旅行は室内の冷房対策になにか上に一枚羽織るものを持参するのがおすすめです。

よくある質問(FAQ)
Q1. タイ国民の94%がインフルエンザに感染しているのですか?
いいえ。94.26%は、10月のウイルス監視検査で陽性となった122検体のうち、H1N1が占める割合です。タイ国民全体の感染率を示すものではありません。
Q2. 2009年のような新型インフルエンザが再び流行しているのですか?
いいえ。今回のA(H1N1)pdm09は、2009年の新型インフルエンザに由来するウイルスですが、現在は季節性インフルエンザの一種として世界各地で流行しています。新たな世界的大流行が発生したわけではありません。
Q3. タミフルなどの治療薬は効きますか?
タイ保健省の調査では、主要な抗インフルエンザ薬への耐性に関係する遺伝子変異は検出されていません。ただし、これは調べた検体に限った結果であり、すべてのウイルスに必ず薬が効くことを保証するものではありません。
Q4. どの年代が特に注意すべきですか?
タイ疾病管理局によると、人口当たりの感染報告率が高いのは5〜9歳、1〜4歳、1歳未満の順です。子どもが多く集まる学校や保育施設での感染対策が呼びかけられています。高齢者や持病がある人も重症化に注意が必要です。
Q5. ワクチンを接種すべきですか?
タイ保健省は、妊婦、乳幼児、持病がある人、65歳以上の高齢者などを中心に、毎年の接種を推奨しています。感染を完全に防ぐものではありませんが、重症化や入院のリスクを下げる効果が期待できます。
出典・参考サイト

著者:Keita Satou
バンコク在住10年以上。旅行ライセンスを持つタイ法人に勤務する傍ら、ライターとしても活動。タイ在住日本人向けメディアとタイ人向けメディアを運営し、日本のテレビ・各種メディア向けに現地情報も提供している。Facebook(フォロワー約1,900人)をはじめ、複数のSNSで合計8万人以上のフォロワーを抱える。職業柄、各業界のタイの裏話や現場の実情に触れる機会も多い。
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