円安問題「なぜアメリカが動いた?」日米協調介入について説明します。

さて、今週はドル円が163円台から157円台までの大ドロップでしたね!ドル購入のタイミングを狙っていた皆さんは、いいタイミングで購入できましたか?
今回の円高方向への大きな動きの背景にあったのが、『日米協調介入』です。

アメリカがユーロ建ての外貨準備を売却→
日本円を購入した理由
しかも今回、アメリカ側が行ったのは、
ユーロ建ての外貨準備を売却
↓
日本円を購入
という、ちょっと変わった介入でした。
「え?なぜユーロ?」
と思った方もいらっしゃるかもしれませんので、まずはアメリカの外国為替安定基金(ESF)について少しだけ解説します。
アメリカが保有する外貨準備は、日本などと比べるとかなり小さく、ユーロと日本円を合わせても数百億ドル規模です。
一方、アメリカの公的準備資産では、IMFの特別引出権(SDR)などが大きな割合を占めています。
あまり今回の本題とは関係ないので余談程度にご紹介すると、SDR(特別引出権)とはIMFが1969年に創設した「国際準備資産」。
IMF加盟国に割り当てられ、必要に応じて米ドル・ユーロ・人民元・日本円・英ポンドなどの主要通貨と交換することができる仕組みです。
以前のへそくり小話でもチラッとお話ししたことがあるかもしれませんが、日本が1兆ドルを超える規模の外貨準備を保有しているのに対し、アメリカが保有する外国通貨が比較的少ない大きな理由は、
「世界の基軸通貨である米ドルが、自国通貨だから」
です。
日本は「ドルを持っておく」必要がありますが、アメリカは自国でドルを供給できるため、日本のように巨額のドル準備を持つ必要がありません。
では今回、アメリカはドルから直接円を買うこともできたはずなのに、なぜわざわざ『ユーロ』を売って円を買ったのでしょうか?
ここが今回の面白いところです。
↓
アメリカが自らドルを売れば、
「アメリカはドル安を容認、あるいは誘導し始めたのでは?」
という余計なメッセージを市場へ送ってしまう可能性があります。
ところが、
ユーロを売る
↓
円を買う
なら、ドルそのものに直接売り圧力をかけることなく、円を買い支えることができます。
つまり、
「円安の加速にはブレーキをかけたい。でも、ドル安政策へ転換したというメッセージは出したくない」
という、なかなか絶妙な介入だったわけです。
なぜアメリカが、日本円を守るためにわざわざ動く?
そもそも、「なぜアメリカが、日本の円を守るためにわざわざ動くの?」と思いませんか?
もちろん、アメリカが日本に親切だから……だけではありません(笑)。
今回の介入で重要なのは、円安がもはや「日本だけの問題」ではなくなりつつあったことです。
ドル円は163~164円台まで上昇し、市場ではさらに円安が加速することへの警戒が強まっていました。
円安が一方向に進めば、
円売り・ドル買いがさらに増える
↓
円キャリー取引なども過熱する
↓
何かをきっかけに急激な巻き戻しが起これば、為替だけでなく株式・債券など他の市場にも大きな変動が波及する可能性がある
というリスクも大きくなります。
さらに、急激な円安が続けば、日本政府は追加の円買い介入を迫られる可能性があります。
そして、日本が保有する外貨準備の大部分は米国債などのドル資産。
介入資金を確保する過程で米国債市場へ売り圧力がかかれば、これはアメリカにとっても決して歓迎できる話ではありません。
つまり、
「円安だから日本が困る」だけではなく、
「円安が行き過ぎると、アメリカや世界の金融市場にも影響しかねない」
という段階に入っていたわけです。
実際、今回の協調介入についてアメリカのベッセント財務長官は、円安が日本だけでなくアジア通貨全体の不安定化につながることへの警戒を示しています。

TBS Cross DIG記事
そう考えると、今回の日米協調介入は、
「157円にしたい」
「160円以下にしたい」
という特定の為替水準を狙ったものというより、
「一方向へ加速し始めた円安に、一度強いブレーキを踏む」
という意味合いが大きかったのではないでしょうか。
実際、163円台→157円台
と、介入直後は一気に円高へ振れたものの、介入から数日経った現在は、すでに158円台まで戻してきています。
この動きを見る限り、『協調介入』といえども、ドル円の長期的なトレンドそのものを変えるほどの勢いは、個人的にはやはり感じません。
となると、今回の介入の一番のメリットは、投機筋に対してのメッセージ性なのかもしれません。
「円を一方向に売り続ければ、今度は日本だけでなくアメリカも出てくるかもしれない」
という警戒感を植え付けた意味は大きかったのではないでしょうか。
そして今回、個人的にもう一つ面白いと思ったのが、
「市場の安定」という言葉です。
先週までの『お金のインフラ戦争』シリーズでは、通貨や資産そのものがデジタル化し、国際決済のインフラまで大きく変わろうとしているお話をしてきました。
将来、こうしたデジタル化によって市場の安定を維持しやすくなるのか、それとも、今までにはなかった新しいリスクが生まれてくるのか。
お金の「形」は変わっても、「価値をどう守るのか」というテーマそのものは、これからも変わらないのかもしれません。
今回のように一時的にドル安・円高へ振れたタイミングも、外貨への資産分散を考えている方にとっては、ご自身の資産配分を改めて考えてみる機会になりそうですね。
『未来の自分』のための『選択肢を増やす準備』。
普段からアンテナを張りながら、「なぜ今、お金が動いているのか?」を考えることこそが、自分の資産を守るための大切な武器になるのかもしれません。
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この記事を書いた人 田中ゆき恵

- イギリスCII Award in Financial Planning認定者
- シンガポールFP資格
- 香港FP資格
- 声紋分析心理士
- 田中ゆき恵のプロフィール:自己紹介ページはこちら
米The University of Michigan卒業。
アジア6拠点を有するInfinity Financial Solutionsに2006年入社。
現在、Hoxton Wealth (UK) Ltdにて邦人向けコンサルタントとして、バンコクオフィス駐在。バンコクや日本での執筆活動に加えて、ジャカルタでの活動の他、ベトナムにも活動拠点を広げる。海外在住日本人にむけた無料相談窓口の海外へそくり教室のLINE生徒は約600名
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